恋のタイミング 

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【said ゆきみ】


マイコに根掘り葉掘り聞くこともできず、きまずそうに樹と一緒に出て行かれた。

シーンとしたオフィスは、直人さんの無言の怒りオーラが見えなくもない。

前に哲也さんが言ってたことは、あながち間違っていないのかもしれない…って、思えた。

でも直人さんだってあやふやだったもの。

ハッキリと告白されたわけでもないし…

だけどよくよく考えてみたら、いつだってわたしに優しかった直人さんに、愛を感じずにはいられない…。

今更だけど。


「マネージャーリファンドお願いします!」


ボックスから岩ちゃんの声が聞こえて直人さんがそっちに行った。

はぁーって小さく溜息。


「ちゅーしちゃったの?藤原くんと。」


聞いたのは哲也さん。ここに二人きりだからってデリカシーないなぁ。


「突っ込まないでくださいよ、そこ。」

「だって面白いんだもん、お前ら。俺は直人の味方だからなぁ〜。」

「哲也さん、直人さん本気かも…です。どーしようわたし。」

「ゆきみちゃん、恋愛で大事なことってなんだか分かる?」

「分かりません。分かってたらもっとうまくやってる。」

「だよね。じゃあ教えてあげるね。」


ニッコリ微笑んで哲也さんはこう続けた。


「タイミングが大事なんだよ。」


タイミングって、どんなタイミング?


「直人はちょっとタイミングがズレてるかもしれないけど、まだ終われないって俺は思う。俺が直人ならバイトの若造相手に絶対に引いたりしないもん。直人の言葉受け取ってからでも遅くないと思うよ。藤原くんとの未来のことも。」


いつもは面倒な哲也さんのおせっかいも、今日ばかりは素直に胸に刺さってしまう。


【マネージャーとれますか?フロア入口登坂です。】

【はい、土田です。】

【16時から二人ヘルプお願いできますか?】


チラリとわたしを見る哲也さん。


【ゆきみちゃんと片岡マネージャーが行きます!】

【ありがとうございます。】


「哲也さんのせいで立花に頭あがんないじゃん俺。」

「大丈夫だよ、朝海は。」


彼女がいるのに、どうしてか哲也さんの「朝海」が特別に聞こえた気がしたなんて。

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