温もりの上書き

【said 舞子】

割り箸を引くと6って書いてあった。


「舞子何番?」


ゆき乃がチラッと覗くから「はい。」って見せたらしょんぼり雨雲をしょる。


「ゆき乃何番だったの?」
「1番。舞子にくっつこうと思ったのに6番じゃくっつけない。」
「はは、そっか。苦手?怖い話。」
「お風呂もトイレも一人で行けなくなりそう。憂鬱。」
「あは、どっちも一緒に行ってあげるよ!」
「ほんと?嬉しい!もー舞子大好き!」


ギューッて抱きつくゆき乃によしよしってしていたら臣がハッとした顔で隆二の所に行ったのが見えた。何となくあれ以来臣と会話もできなくて。だからなのか気になって視線がいってしまう。でも、見なきゃよかった?スっと隆二の持っている割り箸と自分のを交換した臣は、迷うこと無く美波の隣に座って微笑んだんだ。当たり前に私の隣に来る隆二にドキドキしないこともない。だけどずっとモヤモヤが私の胸の中にある。


「舞子、怖い話大丈夫?」


帽子を取ると綺麗な金髪が隆二を美しく見せていて。サラサラなその髪がよくよく似合っている。


「あんまり。隆二は?」
「微妙…?怖かったら掴んでていいよ。」


そう言って黒いシャツの裾を私にヒラヒラと私に見せた。


「…嫌よ服なんかじゃ。手、握るから。」
「あ、うん。いつでも!」


そんなにそんなに美波がいい?臣…。まるで臣への当てつけみたいに私は隆二にくっついて座った。隆二に引っ付きながらも視線は臣を見ているなんて、馬鹿みたい。だから本当にたまに臣と目が合った。ここに来る車の中で繋いだ臣の温もりが、隆二との温もりに上書きされていく。

私を見てそれでも優しく微笑む臣に、なんとも言えない感情が溢れそうなんて。



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