未来への絆

【said 美波】

甘ったるい臣の香りと力強い腕の温もり。いつ哲也がシャワーから出てくるのか、ゆき乃がシャワーから出てくるのか分からないこの状況だけど、この手の温もり程心強いものはなかった。あたしの気持ちを受け止めてくれる臣に、今だけ甘えてもいい？


「美波…なにがあった？俺に話せ。」


臣の低い声が心を落ち着かせるようだった。自分なりに結構頑張ってきたつもりだったけど、哲也本人の口から諦めたら？って言われたのは相当こたえた。もうどーやって生きていけばいいのかすら、分からない。哲也のことを話すあたしのことを、何度もギュッギュッて抱きしめてくれる臣。なんだか安心する。


「辛かったな。よく頑張った、お前。俺なら心折れてるかも。」
「折れた。さすがにあたしも。」
「うん、けどな、解決方法はもう一つしかないよな。美波も分かってんだろ？」


臣の鎖骨に頭を押し付けるあたしをあくまで優しく強く抱きしめてくれる。ポンポンって背中に回した手を一定のリズムであやす臣の温もりは優しいのに、きっと辛いことを言われるんだって。それが臣の言う解決作だって…。首を左右に振るけど臣は「美波。」耳に吐息がかかる距離であたしを呼んだ。顔をあげて真っ直ぐに臣を見つめるあたしの両頬を手で包むと優しく微笑んだ。ずるい、そんな顔。嘘つけなくなる。


「早く哲也を楽にしてやれ。」


ほらね、酷い事言った。臣はそんなこと言わないって思ってたのに。また涙が溢れ出てくる。それを一つも落とさず指で拭ってくれる臣。


「ちゃんと伝えろよ。哲也に美波の想い。じゃねぇと、哲也も美波も一生前には進めない。」
「やだよ。言ったら終わっちゃう。今は実らなくてもいい。それでも哲也を好きでいたい。」
「美波！！俺はもう美波のそんな悲しそうな顔は見たくねぇ。なんで恋愛してんのにそんなに苦しむんだよ。笑えよ、美波。」


頬を撫でる臣の手にまた涙が零れる。


「恋の終わりを、臣に決められたくないっ！あたしが自分で決めるよっ！」


立ち上がってこの場から走り去ろうとすると、入口前の壁に岩ちゃんが背をつけて聞いていた。


「ごめん、俺が悪かった、ごめん、美波…。」


逃げようとするあたしを全力で引き止めて後ろから重なる臣の温もりにまた涙が溢れた。もうあたし達どうしたらいいの？こんなボロボロになるくらいなら、キャンプなんて来なきゃよかった。

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