照れ屋な怒りんぼう

【said ゆき乃】

「ゆき乃。はい、あーげる！」


てっちゃんがニコニコしながら近寄ってきてわたしの好きなチョコとポテチとベビースターを差し出した。


「みんなには内緒だぞ。ゆき乃にだけ買ってきたから！」
「ありがとーてっちゃん！わたしこれ好きなの、よく分かったね？岩ちゃんに聞いたの？それとも、直ちゃん？」
「あーいや、いつも食ってるの見てたから！」
「そっか。嬉しいありがと！」


てっちゃんに頭を下げてそのまま岩ちゃんの元へ。


「岩ちゃんあーん。」
「え？なに？」
「チョコ食べる？あーん。」
「あーん。」


コロって口を開けた岩ちゃんにチョコを一つ入れるとニッコリ微笑んだ。だけどすぐにてっちゃんがやってきてわたしの腕を掴んだ。


「こら。誰にも内緒って言ったろ？岩ちゃんにも内緒にしといてよー。」
「え、だめ？だって岩ちゃんだよ？」
「ケチケチすんなよ、哲也！」


岩ちゃんがわたしの抱えているポテチの袋を破ってそこに手を入れてパクつく。それからもう１枚とってわたしに差し出したからそのままパクつくとニッコリ微笑んだ。岩ちゃんに食べさせて貰ったから余計に美味しいね…なんて思うけど口には出せなくて。わたしも肝心な所で守りの防御に出ているのかもしれない。幼馴染って関係以上を求めているけど、それ以上に自分から進む勇気がないのは、結局自分が傷つくことを恐れているんだと。岩ちゃんと気まずくなるぐらいならこのままでいいって。後ろで不満そうにしているてっちゃんに気づかないフリも苦しい。お願い、美波のこと見て。お願い…。

そんな願いが届くこともなく、お昼ご飯を作ろうってことになったわたし達。隣にはてっちゃんがピタっとくっついている。もちろんあからさまに拒否することもできないし、かと言って美波の方に行け！とも言えないし、やっぱり複雑で。


「口、尖ってんぞ。」


顎を直人に掴まれてピヨピヨ口になってしまう。


「うわ、可愛い…。」


てっちゃんがそんな声を発したけど、直人が身体入れててっちゃんを隠したからまぁ見えなくなった。


「離ちてよぉ。」
「直人って言ったら離してやるよ。」


ニヤって笑ってそう言う直人。…今更なんで直人？「…にゃおと。」カアーって直人の顔が真っ赤になってスッと手が離れた。


「直ちゃんが言ったんだから照れないでよ。」
「お前絶対人前で言うなよ！？」


何故か怒られたけど、目が合ったてっちゃんはニッコリ微笑んで「俺も哲也って呼んで？」なんて言うんだ。もう直人のせいでわけわかんない。

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