岩田剛典*1

ブーっと振動するスマホに、制服のブレザーから取り出してメッセージを見る。1年の時同じクラスだったゆき乃から。


【剛典ねむーい。助けてぇ。】


ぶっ。ほんの口角をあげて笑うと俺は【ばーか。】そうLINEを返した。すぐに既読になってまたメッセージが届く。


【この前撮ってた変顔プリーズ。それがあればあと10分のりきれる!】


たく、仕方ねぇな。カメラロールをあけて違和感。え!?


「なんだこれっ!?」


思わず心の声ごと口に飛び出した。当たり前に先生が俺を振り返る。


「岩田、どうした?」


怪訝な顔で俺を見つめる先生に苦笑いをして「いえ、自分の脳内で違う解釈をしていたようで、すみません。」適当にそう言うとむしろ先生に感心された。優等生のレッテルを貼られている俺の本性なんてくだらなくて。それを唯一知っているのがゆき乃だった。つーかなんだよこの写真。俺の知らない写真がそこには何枚もあって。いつの間に撮ったわけ!?そこに写っているのはゆき乃のドアップで。いろんな表情で写っていた。だけどよくよく見ると一つ一つ違っていて。え、ちょっと待って…―――


5限終了のチャイムと同時に教室を飛び出した。向かうは隣のクラス。分かっていたのか、ゆき乃が笑顔で手を振っている。その手を掴んで屋上へと続く階段を登る俺達。


「剛典っ、どうしたの?」


重たいドアをあけて俺はスマホをゆき乃に突きつけた。思いっきり目を見開いた後、慌てて顔を逸らすゆき乃を睨みつける。


「なに、これ?」


その顔は慌てているようにも、ホッとしたようにも、照れたようにも、様々で。


「バレたか。」
「…ここ、読んで。」
「………え。」


写っているのは間違いなくゆき乃の顔。でも口の動きが全部違っていて。それを一つ一つ組み合わせていくと…


「たかのりばーか。」
「違う、その後。」
「…―――たかのり、…す、き。」
「LINEで告白された俺の身にもなれ?」
「…えへへ、しかも授業中に?」
「笑いごとかよ、たく。ちゃんと口で言って?」
「口で言ったら…剛典も口で返事する?」
「当たり前だろ。」
「うん、好き。剛典が好き。」


真っ赤な頬でそう言うゆき乃の首に腕をかけて、そのまま唇をがっつり塞ぐ。そのまま言ってやったんだ。



「ほへほうし…。」


全くもって言葉になんかなってなかったけど、ゆき乃にはちゃんと伝わっていた。

おれもすき…。って。

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