土田哲也*1

「ゆき乃ちゃん、頭痛薬あるー?」


ガラッと保健室のドアを開けてそう言う。デスクに座って書類を書いていたのか、眼鏡を取ると振り返って俺を見た。その顔に書いてある「またか。」と。まぁまた、なんだけど。


「こら土田。またサボりか?」


足を組み替えるその仕草が年頃の俺には堪んないってこと分かってんのか分かってないのか、ゆき乃ちゃんってマジ、エロい。まぁそんな所も好きだけど。それからその眼鏡もね。


「まさかー。昨日遅くまで課題やってたからなー。頑張りすぎちゃったてっちゃんに癒しのハグとか、して欲しいなーゆき乃ちゃーん。」


ベッドに座ってちょっと上目遣いでゆき乃ちゃんを見上げると、俺の肩に手を置く。お、今日はご機嫌?そのまま顔を寄せるゆき乃ちゃんに自然と目を閉じるとふんわりとなんともいえない大人っぽいスパイシーな香りが鼻をついた。


「調子にのるな!」


パチってデコピンが落ちる。いってぇ。チューぐらいいーじゃん、減るもんじゃないしぃ。アヒル口でゆき乃ちゃんを見つめるとクシャっと髪を撫でられた。うーわ今のが余計に理性飛ばすってこと分かってねぇよマジで。


「いつになったら俺とデートしてくれんの?」
「いつになってもしないわよ。」
「なんでだよー?俺だってあと一年で卒業したらゆき乃ちゃんと肩並べて歩けるよ。」
「歩かないわよ。土田はガキ。あたしガキは興味ないもの。」


腹立つー。毎回俺をガキ扱いだよー。ガキに見えようがタイプじゃなかろーが、俺も男だから。ゆき乃ちゃんの腕を掴んでベッドに押し倒した。瞬きもしないで真っ直ぐに俺を見上げるゆき乃ちゃんに、キスすらできねぇじゃねぇか、クソ。そんな信じきった目で見んなよ。それとも、ここで俺にキスされようが、抱かれようが、ゆき乃ちゃんにとっては大したことねぇのかよ?


「弱虫だな、土田は。」


起き上がったゆき乃ちゃんの言葉に俺は溜息をついて保健室を出た。


「マジで弱虫か、俺は。」


小さく息を吐き出して空を見上げる。さて、ゆき乃ちゃんに似合う男になるように今日も頑張りますか!

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