甘COOL | ナノ
褒められた


「わ、わ、わ…か、か、可愛い…。」


藤原さんの家の玄関を開けた瞬間、ミャーミャー猫がこちらを向いて鳴いている。彼の足にスリスリと身体を寄せる猫に思わず溜息が漏れる。


「へぇ〜。滅多に近寄らねぇのに、珍しいな…。」
「え?なにが?」
「俺以外に懐かないのに、お前には人見知りしないんだな〜って。」


子猫を抱き上げた私を見てちょっとだけ不満気な藤原さん。


「あは、もしかして、ヤキモチですか?」
「別に。褒めてんだよ。動物に分かるもん持ってるって。」


ポスって私の頭を1バウンドして靴を脱いだ彼は猫を引き連れて奥のリビングへと誘導した。なんだろうか、普通に褒められるよりもすごく嬉しい。


「で。もう帰る?」
「え?」
「猫見たらすぐに帰るっつったろ?」


確かに言った。言ったわよ。でも今の今で…。


「あの…もうちょっと遊びたい。だめ?」
「いいよ。飯、作ってやるから食ってけよ?一緒に食おうぜ。」
「…はい。」


私に作れって促したのに、結局自分で料理を始めた藤原さんはとても器用で。あっという間にビーフシチューを作り上げた。軽く焼いたフランプパンと、ウインナー付きアボガドサラダ。…―――惚れそう。なんて既に惚れてるのかな、私ってば。このまま帰りたくないなんて思っちゃってる。

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