猫より君の笑顔に
この人絶対に女の扱い方慣れてる!私が気になっていることすら、見抜いてるの?それともカマかけてるだけ?…全く読めない彼の心。こんな風に自分を出すなんて、期待したくなる。冗談なら今すぐ止めて欲しい。
「…気にしてませんよ別に。気になってなんか…。」
「分かってるよ。ちょっとからかっただけ。一條さんがあまりに落胆して見えたから。」
「なっ!馬鹿にしないでください!私だって彼氏の一人や二人…。」
「二人もいんの?すげぇなやり手だねぇ。」
余裕な笑みを零す藤原樹、コノヤロウ!
「いるわけないでしょ!」
「分かってるよ。面白いね一條さん。」
クククククって肩を揺らして笑うその顔も、悔しいけどドキドキする。見れば見るほど、かっこいい。困り顔の私の頭をポンっと叩いて「見に来る?俺の猫。」掴まれた手首に若干の力が籠る。
「え?」
「すげぇ可愛いの。見たい?」
「…でも。仕事は?」
「俺がいなくてもいくらでも回る。飯でも奢るよ。まだ食ってねぇよな?」
確かにお腹は空いてる。どこかで奮発して食べてやろうかって思っていたぐらいだから。それに私きっと…
「…行きたい、です。」
「決まり!」
スッと握っていた手を離すと、慣れた手つきで背中を軽く押して誘導された。
― 6 ―
prev / TOP / next