可愛い独占欲
【side マイコ】
キャンプ最後の夜。ここからすぐの海辺で大きな花火大会が開催される。私達はみんな浴衣に着替えてその花火を見に行った。出店でアンズを買った私は隣で綿あめを食べてる壱馬をしばし見つめる。
「見すぎやろ!」
「だって壱馬かっこいいんだもん。今日は地元の女の子も沢山来てるし、あの人かっこいい!って思われたらイヤ。」
自分がこんなにもヤキモチ妬きだなんて知らなかった。壱馬を前にすると好きが溢れて止まらない。そんな私を見てニッコリ微笑んだ壱馬は、綿あめを反対の手で持つと、その手で私の肩を抱いた。
「マイコって独占欲強ない?」
「…え、やっぱりそう思う?」
「まぁ。けどかまへん。つーかそんなん可愛いだけやし。たぶんやけど、俺んが強いで。今この瞬間も、マイコの事見とる奴がおったら殴ってまいたいぐらいやっ。」
「…壱馬。」
「まぁまぁせんけどな。…って、慎お前か、視線感じる思うたら。」
ツンって肩で私と反対側にいたまこっちゃんを突いた。
「だってなんか俺の入る隙間もなにもないよね。」
若干の苦笑いでまこっちゃんが同じくアンズを頬張った。それからジャンケンで買ったんだろう、もう一本よおまけのアンズミカンを私に差し出す。
「え?」
「あげる。」
「いいよ、まこっちゃんが食べなよ。」
「俺焼きそば食べたいから、はい。」
ちょっと強引にそれを私に押し付けたまこっちゃんはクルリと反転して、焼きそばを買いにまた人混みに消えて行く。あんな風にまこっちゃんを傷つけて、正直どう話せばいいのかとも思っていたけれど、至って普通に接してくれたまこっちゃんを、やっぱりその気持ちは愛にはならないものの、好きだと思えた。勿論、友達として。
いつかまこっちゃんがまた新しい恋をしたら、一番に応援してあげたい…そう思うんだ。
「マイコ。」
呼ばれて振り返ると、不意打ちで壱馬のキス。至近距離で目が合ってまたちゅっと重なる唇。誰にどう見られてもいい…。このまま一生、壱馬と一緒に居たい…。
「好き、壱馬。」
自然と口をついで出たその言葉にコツっとオデコを重ねた壱馬が小さく言った。
「やっと聞けた、マイコの好き。…胸がいっぱいや。」
泣きそうな壱馬の声に、私まで胸がいっぱいになる。大好き、壱馬。
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