大好きで大事な友達

【side 陸】


「りっくん、動かないで!」
「そんなこと言われても…。」


さっきからこのアングルやばいっしょ…。川原でBBQを終えて、夜を迎えた俺ら。花火大会に行くのに全員浴衣に着替えるってゆきみに着付けて貰ってるけど、俺の足元に膝まづいて腰に腕を回すゆきみに嫌でも反応しそうでやばい。何度となく俺が腰を引くから着付けしずらいみたいでゆきみもグッと力を入れて腰に巻きついてくる。辛うじてゆきみを見ないようにってしてるけど、声をかけられるとそっち見ちゃって…


「ごめん、俺後にして!」


上目使いで半口開けてるゆきみに、そこが反応したのは間違いない。慌ててゆきみから離れるとそこで俺はぴょこぴょこジャンプ。


「陸のへんた〜い!」


朝海がクスクス笑いながら俺の肩に腕をかける。だからその腕を掴んでグっと顔を近づけた。


「朝海が着付けしてよ!」
「え〜いいの〜?あたしで?せっかくだからゆきみにやってもらいなよ…―――着付けをね。」
「…無理だよ、朝海頼むって。」
「いいじゃん。どーせなら北ちゃんから奪っちゃえば?」
「たく。人がせっかく友達として見ようとしてるっつーのに。朝海なんてもうこれっぽっちも俺のこと好きじゃないでしょ?」


親指と人差し指で小さなハートを作って朝海に差し出すとその手をギュっと握った。


「そんなこと…あるかも!陸のことは陸で、好きだよ。でもケンちゃんとはやっぱ違う。ね、陸!あたしのこと、友達としてこれからも仲良くしてくれる?」


なんか朝海らしくない言葉だと思ったけど、色々あった俺達は、自分の気持ちを隠さず正直に話せる仲になってるって思えるわけで。


「当たり前だろ!!朝海も、マイコも、ゆきみも…。俺には大好きで大事な友達だから!」
「ふふ。ケンちゃんと喧嘩したら慰めてよね?」
「その時は、な!」


クシャっと朝海の髪を撫でるといい顔で笑った。だから心から思えた。この笑顔に会いたかったんだと。



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