ザ、ガールズトーク

「マイコは?まこっちゃんと壱馬のキス、どっちがよかったぁ?」


イシシシってゆきみが微笑みながら聞いてきて。朝海のふわふわ視線も飛んでくる。


「まこっちゃんともそうなってたの知らなかったなぁ。北ちゃんが見てたんだって、マイコとまこっちゃんがケンちゃんの車でキスしてたの!」
「げ、健太の車!?」


朝海がそんな声をあげるから苦笑いしか返せない。てゆうか北ちゃん!ほんと余計な事を。いやでもこんな事がないと言いづらいか。


「もー叶わないなぁゆきみと北ちゃんには。まこっちゃんに告白されてキスされてすごく幸せな気持ちになってね。でもやっぱり壱馬のことが頭か離れなくて。まこっちゃんと付き合えば幸せかな…とか思ったりもしたけど、結局壱馬のことが消せなくて、」
「マイコも一人で苦しかったね。」


朝海の言葉に微笑む。自分を棚に上げて。今が幸せだと過去の辛さも緩和されるけど、胸の奥にある傷はやんわりとチクってするけど、それでも十分に笑える。最も朝海は陸の事すらもうどこにも無さそうだけど。陸の涙は私が忘れなければいい。


「樹が言ってたでしょ、私って自分の事になると頭ん中真っ白になっちゃってダメで。壱馬に告白されて壱馬のことしか考えられなくなっちゃって、でもそんな私を壱馬はちゃんと受け止めてくれた。だから私壱馬を信じてこれからもついていく。」
「いっちゃんは何でも知ってるからなぁ。」


ほんのり上を見てそう呟くゆきみ。ゆきみみたいなぽわぽわした子には本当は樹みたいなしっかりした男が似合ってる気もするけど。でもまぁゆきみが選んだのは北ちゃんだし。そんなことをほんの一瞬思ったら朝海が苦笑いで言ったんだ。


「ゆきみは、北ちゃんより樹のがうまくいきそうだけど。大丈夫?」


まさかの私と同じ意見を言葉にした朝海が可笑しくて。それを聞いたゆきみも複雑な顔をしていて。でもぷーって頬を膨らませて朝海を軽く睨む。


「そんなことない!北ちゃん言ってくれたよ、いっちゃんがどんなにかっこよくても、自分がどれだけダサくてもゆきみを想う気持ちは負けないから奪えるもんなら奪ってみろ!って。それ聞いて安心したの。北ちゃんて昔から不思議ちゃんなとこあったから、いっちゃんのが気持ち出してわたしに触れてくるからどーしよう?って。」
「ゆきみも悩んでたんだ?でもそれなら安心。自分をダサいって言える奴は強いと思うよ。北ちゃんは、ゆきみを幸せにしてくれるって、あたしは思う。」


朝海の言葉にゆきみが嬉しそうに笑った。


「一反木綿だけどね。」
「「「ブーっ!!!」」」


好きな人の事で、こんな風に3人で笑える日が来るとは少し前までは思わなかった。そういう環境を作っていたのは私達自身で、その殻を破ったのも私達だ。これからは安心して二人に色々話していけると思うと私と壱馬の未来すら明るく思えたなんて。



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