涙の意味

「朝海あの、ごめんね。りっくんのこととか何も聞いてあげられなくて。どうしたらいいのか色々考えても分かんなくて。朝海が一人で泣いて苦しんでたって思うとすごく苦しくて…。」


今になっていきなりの陸の失恋に触れたゆきみに慌てて陸がシャキっと背筋を伸ばす。


「いいよもう。あたし健太しかいないし。」


ニッコリ微笑む朝海に私はあの日の陸の涙を思い出す。


「ダメよ。あのね、今は朝海が幸せだからいいのかもしれない。でもやっぱり苦しい時、辛い時は話して欲しいの、これからは。私やゆきみに言うことじゃないこともあるかもしれない。でもどんな時でも私達は、友達だって思ってる。朝海が一人で苦しむのはもう嫌。だからこれからはどんなことでも話して?」


思わずゆきみに便乗した私に対して、朝海は相当幸せなのかヘラヘラしている。


「うん、分かったから。でももう本当に、ね?」
「私も!!!!話すから、二人に。いっぱいあるの、聞いて欲しいこと…。」
「え、マイコ!?泣いてる!?」


ゆきみに言われて顔を上げると視界がクリアになった。朝海もぎょっとした顔でこっちを見ている。なんなら隣の壱馬が「マイコ?どうした?」心配そうに私の腕に触れた。だけど樹がブって笑って…。


「ほんっと自分のことになるとダメだな、マイコは。」


分かったように言うんだ。


「別にお姉さんしなくていいんじゃねぇの?どんなマイコも俺ら変わらず好きだし。な、慎?」
「え、うん。俺はみんな以上に好きだけど、でも壱馬にならマイコを預けてもいいって思ってる。壱馬以外は許さないけど。」
「素直だな、お前。」


まこっちゃんの言葉にまた涙が溢れてくる。別に無理にお姉さんしていたことでもないけど、自分のことになると、若干感情のコントロールが難しいことに最近気づいた。でもそれはそう…壱馬のことであって。


「マイコ、マイコ、ごめんね。わたしもいっぱいあるの、言いたいこととか。北ちゃんが一反木綿な件とか…。」
「ちょっと!!!」


私を見つめるみんなの視線はとっても優しくて…。このみんなでキャンプにこれてよかったと思わずにいられない。


「全部聞くよ。北ちゃんの一反木綿の件から何から全部ね。」
「だからやめてよ、その言い方!」


北ちゃんがツバ飛ばす勢いで真っ赤な顔して怒ってるのに、またみんなが笑う。


「だから朝海も、ちゃんと話して。それがずっと寂しかった。朝海が一人になろうとする度に、私は朝海にとって必要ないんじゃないかって…。何の相談もできない友達なんて意味があるのかな?って。でも私自身も何も言えてなかった。まこっちゃんと壱馬、どっちも好きかも…とかそういうの軽蔑されたらどうしよう?とか、怖くて言えなくて…。」


ボロボロ次から次へと流れてくる涙に、ボソっとまこっちゃんの「どっちも…!?」焦った声がした気がする。



― 87 ―

prev / TOP / next