幼馴染三人

【said ゆきみ】


「明日は花火、できるかな…みんなで。」


窓の外の嵐は一向に収まる気配がない。朝海とケンちゃんに追い出されたわたしとマイコ。あの部屋はもうあの二人に使わせてあげたい…なんて思ってしまう。


「ねーいっちゃん。朝海とケンちゃんどうだった?」


シャワーを終えて濡れ髪のままの樹が缶ビールを片手に振り返った。


「うまくいったよ、あの二人。」
「え、ほんとっ!?」
「ああ。ドエロイキスしてたからなぁ。」
「う、そうなんだ。…でもよかったぁ。」
「陸の顔見ても、全く嬉しそうじゃねぇのがウケたけど、朝海。健太しか目に入ってなかったんだろなぁ、熱出す前から。」
「いっちゃんはなんでも知ってるね。」
「は?見てたら分かるって誰でも。」


そうだけど、樹の千里眼は半端ないと思うわけで。


「マイコとまこっちゃんと壱馬も…大丈夫かな…。」
「慎は大丈夫だろ。後はマイコの気持ち次第じゃねぇの?」
「…うん。」
「お前さ、そーいうの、俺じゃなくて直でマイコに色々聞いてやればいいんじゃないの?」


樹がわたし用に冷蔵庫からほろよいを持ってきてくれて。それを開けるとわたしに差し出した。あんましお酒飲めないけど、これは美味しいっていつも飲めることをよくよく分かっている。ゴクっと一口飲むと、それを横から手を伸ばして奪い取る北ちゃん。


「俺にも飲ませて。」
「いいよ、飲んで。」


ゴクリと飲んでまたわたしに返した。視線をもう一度樹に戻すと呆れた顔でこっちを見ていて。


「マイコに直接?」
「そうだよ。朝海も同じ。口、ついてんだろ?キスするだけに使うわけじゃねぇぞ、それ。」


ンチュって樹がエアーキスをするから思わず北ちゃんに一歩近寄ったら笑われた。「なんもしねーよ、もう。」って。やめてよ、北ちゃんの前で。そう思いながらもチラっと北ちゃんを見ると、据わった目でわたしと樹を見ていて。


「そんなの分かってますけど。」
「じゃあ話せ話せ、女の口はトークする為にあるようなもんだろが。」
「うん、そうだよね。」


言葉が足りないのはわたし達自身なんだって。りっくんのことも、北ちゃんや樹のことももっともっと二人に相談すればよかった。


「まこっちゃんも大丈夫だよ。ちゃんとおめでとう言うって言ってたし。壱馬かっこいいし。」


北ちゃんの優しい笑顔に心が落ち着く。ベッドに寝っころがってわたしの腕をプニプニ掴む北ちゃんを見つめて髪を撫でるとチュウってエアキスをくれた。



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