募る不安

【said マイコ】


吐ききったまこっちゃんをベッドに運んだ北ちゃん。私達はみんなが帰ってきた時の為に部屋を暖めてお風呂も玄関も全部掃除をして、温かいスープとご飯を準備してひたすら待っていた。時間がたつにつれて不安は募っていく。壱馬…。壱馬…。どうしても壱馬のことばかりが頭に浮かんでしまって。


「ゆきみ…。」
「うん?」
「遅くない?みんな…。」


時計を見ると夕方の5時で。嵐のせいで外はもう夏だというのに真っ暗だった。


「大丈夫。絶対大丈夫。」
「うん。分かってる、でも不安で…。」


私の言葉にキョトンとした顔を見せるゆきみ。


「不安?」
「だって、すごい雨だし…。朝海は具合も悪いのに…。」
「でもケンちゃん行ったし、いっちゃんもりっくんも壱馬も行ったし。マイコの不安は壱馬?」


トンって胸元をゆきみに押されて苦笑い。


「まこっちゃん、お断りしたの?」
「…うん。」
「わたしもりっくんといっちゃんにごめんって言ったよ。」
「…そっか。」
「マイコが不安なのは、まこっちゃんが泣いたから?」
「…分からない。でも壱馬を選んだこと、後悔はしない。だけどまこっちゃんの悲しい顔を見るのは辛い。」
「優しいからだよ、それ。でもまこっちゃんにもちゃんと伝わるはず。だってわたし達仲間だもん。」
「え?」


聞き返した時だった、玄関の方から沢山の足音と話し声。ドアを開ける音がして「マイコ―!」壱馬が真っ先に私の名前を呼んだんだ。急いで玄関まで走っていくと、びしょ濡れのみんなの中、壱馬が私を見て優しく微笑んだんだ。


「ただいま、マイコ。」


タオルを抱えたまま壱馬を抱きしめた。今までの不安が嘘みたいに溶けていくなんて。



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