あたしのこと好き?

「…まっず…。」
「ぐふふふふ、まっず。」


思わず二人目を見合わせて笑う。あたしが泥まみれだったせいで、健太まで顔に泥がついてて…。指であたしの唇を拭うけど余計に泥がついて笑うんだ。


「あ、ちょうどいい。」


そう言うと健太はあたしの首を持って顔を上にする。げ、雨のシャワーかよ?でも雨で顔の泥が落ちたのを確認すると、また重なる唇。思いっきり健太の身体に巻きつきながら、繰り返されるキスに胸の中が温かい気持ちになっていくのをただ感じていた。


「クシュンッ。」


ブルっと身体が冷えてクシャミをした瞬間、健太がコツっとオデコを合わせて「ごめん、止まんなくて…。」そう言うんだ。あたしをぎゅうって抱きしめて「帰るか。」小さく言った。


「健ちゃん…。あたしのこと、好きって…。」
「言ったべ。」
「ほんと?」
「この嵐の中、嘘つく馬鹿がどこにいるんだよ?」
「ほんとに、ほんと?」
「信用されてねぇな、俺。」


いつもみたいに「ぐふふふふ」って笑う健太からあたしはもう一秒だって離れたくないんだよ?今更冗談なんて無理だからね?


「続きはベッドの上でしようや?」
「…うん。」
「ぐふふふふ、素直だな。」
「うん。」


健太に抱えられるようにしてドロドロの山道を登る。そこにいたのは陸と樹と壱馬。三人共あたし達を見て笑っていて。


「よかったね、朝海。」


陸が嬉しそうな笑顔をあたしに向ける。樹も壱馬もニヤついているだけで何も言わないけど…。


「なにがよ?」


何だか今更こっ恥ずかしい。だって健太のキス、めっちゃよかったし…うまいし。


「可愛いよ、朝海。」


陸がそれでも嬉しそうにあたしを撫でる。ずっと欲しかった陸からの言葉だったのに、あたしの心にはもう健太以外いないなんて。



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