隠しきれない悲しい本音
三時を回った頃、物凄い雷音と共に、ずぶ濡れのまこっちゃん達がコテージに戻ってきた。玄関まで行くと、そこにぶっ倒れてるまこっちゃん。
「ま、まこっちゃん!?どうしたの、大丈夫!?」
私がまこっちゃんを引き上げようとすると、ムギュっと足に腕を回して抱きついた。
「マイコ悪い、慎潰しちゃって…。」
樹がまこっちゃんを足から剥がそうとするけど抱きついて離れなくて。こんなにすごい雨なのに、玄関は酒の匂いで充満している。
「まこっちゃん酒弱いのに…。」
「おい慎、ほら離せって。マイコ困ってんだろ。」
樹がまこっちゃんの脇に腕を入れるけど、その度に強く私の足に巻きついて、そのまま真っ直ぐに私を見つめたまこっちゃんは潤んだ瞳で続けたんだ。
「なんで俺じゃないの?こんなにマイコのこと好きで好きで大好きなのに、どうして俺じゃだめなの?ねぇマイコ、なんで?俺のなにがダメ?俺のどこがイヤ?俺、直すしもっとマイコが好きな男になるからさ、だから俺を選んでよ…。嫌なんだよマイコが俺以外の奴と一緒にいるの、すっげぇ嫌なんだよっ。」
まるで吐き捨てるかのような言葉だった。まこっちゃんの気持ちが大きすぎて重たすぎて立ってられない。よろめく私を樹が片手で支えてくれる。こんな時に限って壱馬はシャワータイム。私を抱いたからそれがみんなにバレないように…。
「慎、よせよ。それは言わない約束だったろ?それ言ったらマイコが困るから。困らせたくねぇってお前言ってたじゃねぇか。酒飲んでもいいけど、理性は見失うなっつーの。」
ガンって樹がまこっちゃんの背中を叩くとまこっちゃんがその場で吐いた。
「うわー!大丈夫!?」
駐車を終えた陸が玄関に入ってきて吃驚してまこっちゃんをトイレまで連れて行ってくれて。
「マイコもシャワーしてこいよ。マジで悪かったな。酔って言ったことだから気にすんなよ。寝て起きたらいつもの慎に戻ってるから。な?」
樹はそう言ってくれるけど、私は動けなくて。タオルで樹がまこっちゃんの吐き出したものを拭いてくれてシャワールームに押し込まれる。だけどすぐにドアが開いてケンちゃんが洗面器を持って入ってきた。
「あ、悪い。朝海だいぶよくなったからそろそろ部屋に入ってもいいよ。って、くっせぇ、マイコどうした!?随分騒がしいけど…。」
「…あ、朝海、よかった。」
笑ったつもりだけど、私の頬はもしかしたら引きつっていて。ケンちゃんの大きな目が真っ直ぐに私を捉えている。どうしたらいいのか分かんないのに、私…「マイコ、マイコ、落ち着け。」震える私をケンちゃんの腕がギュっと抱きしめた。
「どうしたんだよ、何があった?俺が全部聞くから全部俺に吐き出せ。」
「…ケンちゃん、ケンちゃん…私、どうしたらいいか…助けて、ケンちゃん…。」
ゴロゴロと雷が鳴り響いて、大雨が降きすさんでいる。もう何の音も聞こえない。壱馬もまこっちゃんも選ばなきゃよかったの?
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