溺れて

【said マイコ】


壱馬と二人っきりのこの部屋。なんとなく喋れなくて。まこっちゃんの気持ちを思うと至極胸が痛い。気にするな…と言われてもやっぱり気にしてしまう。せっかく壱馬と二人っきりの時間なのに。


「マイコ、ちょおここ来て。」


ベッドの上、開いた足の間に私を閉じ込める壱馬。後ろからふわりと重なる壱馬の温もりに心臓がキュって高鳴る。こんなにも壱馬のこと好きなのに、まこっちゃんを思うとやっぱり何も言えなくて。


「しゃあないねん。こればっかりは。俺も同じやってマイコと。」
「…うん、そうだね。」
「けど、そういう優しいマイコも好きやし。」


ただ抱きしめてくれる壱馬に今は甘えていたい。壱馬が相手でよかった。こんな私でもちゃんと見ていてくれて受け止めてくれる優しくて強い壱馬と、やっぱりどんなことがあっても一緒にいたい。くるりと反転して壱馬にギュっと抱きつく。


「壱馬と二人だと、何も考えられなくなっちゃう…。」
「え?」
「壱馬のことしか頭に入ってくれない…。」
「自惚れてええのん?」


サラサラと髪を優しく撫でる壱馬を真っ直ぐに見つめるとニッコリ微笑むんだ。


「いい。自惚れて…―――溺れてよ、私に。」
「もう溺れてるわ、マイコに。」


トサっと後ろに倒されて上には壱馬。もうここはシャワールームでもないし、誰かに見つかることもきっとない。無言で顔を寄せる壱馬にそっと目を閉じると、迷うことなく重なる唇。心臓鷲掴みにされたみたいにキュっと痛くて。顔を埋める壱馬の頭を撫でると舌が首筋にまたチュっと強く吸い付いた。


「あかん俺、がっつきすぎやんな?」


そう言いながらもキスを止めない壱馬が好き。


「いい、構わない、壱馬になら…。」
「マイコも…俺に溺れて…。」
「壱馬…。」


大好き…―――そう言う前にキスで塞がれた。もう壱馬のことしか考えられない。



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