誰が好きなの?

【said 朝海】


「メロンソーダー飲みたい。」
「…却下。」
「どうしてよ?メロンソーダー以外飲みたくないもんっ!」
「この我儘め。俺の特性カルピスで我慢しろ?」


二度目に目覚めたら、今度こそケンちゃんがあたしの部屋にいて嬉しくなった。まだ身体は怠いけど気分は上昇してつい甘えたくなる。


「やだカルピス。」
「薬飲まないとだめだぞ。」


そう言ってケンちゃんはあたしの前髪を指であげると、そこに自分のオデコをくっつけた。どうやらこれがケンちゃん流の体温のはかり方らしい。でもこれを他の女にもしていたって思うと、それはそれで腹が立つ。


「ケンちゃんの元カノってどんな人?」
「なんだよ急に。」
「…可愛い?綺麗?大人っぽい?セクシー?」
「忘れたよ、もう。」
「…じゃあ誰が好きなの?」


なんでこの言葉を言うのにこんなにもドキドキしているんだろうか。マイコって名前が出てきたらどうするつもりなんだろう?ベッドに寄りかかっているあたしをジーっと見つめていたけど、おもむろに煙草を取り出して火をつけた。窓を開けると風がビュービュー唸っていて…


「今夜は荒れそうだな。」


話を逸らされた。でもあたし以外の名前を聞くぐらいならそれでもいいのかもしれない。


「健太特性たまご粥作ってくるから、ちょっと待ってろ。」
「…マイコが作ったやつでしょ?」
「違うよ。俺が作るから、安心して寝てろ。」


クシャってケンちゃんがあたしの髪を撫でる。その手にそっと触れると、堀深い顔をゆっくりと近づけた。え…―――思わず目を閉じたあたしの頬を、ムニュっと指で摘まむ。げ、キスしねぇのかよ。


「病人に手出す趣味はねぇの、ぐふふふふ。後で一緒に寝てやるから待ってろよ。」


クシャどころか、グシャグシャに髪を撫でまわしたケンちゃんは照れ隠しなのか、口笛を吹きながら部屋から出て行ったんだ。

…―――病人じゃなかったらキスしたのかな?



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