愛してる。

【said 陸】


「俺リビングで寝るからマイコベッド使えよ。」
「いいの、色々考えたいことがあるから、しばらく庭にいるだろうし。」
「けど、」
「陸、ありがとう。」


昨日あの後なんかあったのか、今朝からマイコの元気がないように思えた。慎と一緒にいるマイコはそれなりに楽しそうだけど、ふとした瞬間に悲しそうな顔をしていることにマイコ自身気づいてないのかもしれないけど。今夜は俺も眠れそうもない。


「朝海、大丈夫かな。」
「うん…。ケンちゃんついてるけど、なんかあったのかも。樹は知ってるみたいだけど聞いても何もないって言わなくて。」
「そうなんだ、」


俺が心配することじゃないのかもしれないけど、やっぱり仲間がどうにかなっている時は少しでも力になってあげたい。いつもなら続く会話も今日はキレキレで。シーンとした瞬間、部屋のドアが開く。俺を見てホッとした様なケンタがそこにいた。


「陸、悪い、頼みがある。」
「え、なに?」


小さく息を吐き出すとケンタがほんのり眉毛を下げて俺を見た。なんともいえない表情でこう続けたんだ。


「朝海のこと、診てやってほしい…頼む。」


軽く頭を下げるケンタに視線を逸らす。


「え、あの…。」
「俺じゃねぇんだ、目が覚めて一番に逢いたい奴。うわ言みてぇに陸ってずっと言ってる…。頼むよ、朝海のこと、悲しませないでこれ以上…。」


どーする?でも言うべきじゃねぇ。朝海が言わないことは誰も知っちゃいけねぇ。けど…


「ケンちゃん、私を代わりに行かせてよ。」


マイコがそう言ってくれるけど、ケンタは首を横に振る。


「陸じゃなきゃだめだ。頼む、」


もう一度ケンタが俺に頭を下げた。やっぱりケンタは朝海を…。


「なら一つだけ聞かせて。」


俺の問いかけに顔を上げたケンタ。その瞳は真っ直ぐで吸い込まれそうなくらい。


「ケンタは朝海のこと、好きだろ?」


ずっとそうだと思っていた事で。ずるいかもしれないけど、朝海がケンタの想いに気づいてくれたら嬉しいとも思っていた。

照れくさそうに笑った後「好きじゃねぇよ。」そんなケンタの言葉。でも続く言葉に俺もマイコも泣きそうになったんだ。


「そんな言葉じゃ言い表せるか、愛してる、ただそれだけだ。」


なぁ朝海。早く気づいてやれよ、こんなにも朝海を想ってる優しくて強い男に。



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