ずるくてもいい

【said 慎】


マイコと話したくて探していたら窓の外、「えっ！？」陸に抱きついてるマイコがいた。嘘だろ…。壱馬なら納得できるけど陸って…。出て行こうかどうしようか迷ってたら、シャワーから出てきた樹がすっ飛んで外に行った。よく見ると陸は泣いているのか…背中が小刻みに震えていて…―――なんとなく分かったような気がした。樹が出てったわけは、ゆきみだろうって。俺だけじゃなく、みんながみんな自分の気持ちに正直に動いているんだって悟った。壱馬はああ言ったけど、壱馬だってわかんねぇ。いざってなったらきっと…。自分の気持ちに嘘はついて欲しくないなんて。


「まこっちゃん？」


しばらく経ってからマイコがコテージの中に戻ってきた。陸が入って数分してから来たマイコ。その顔はなんとも複雑そうで…。玄関の壁に背をつけてマイコを待っていた俺を見てほんの一瞬驚いた顔で俺を呼んだ。


「マイコ待ってて…。」
「あ、ごめんね。ちょっと星見てて。綺麗だよ、星。やっぱり都会と違ってここは空気も美味しいしすごく綺麗…。」


ニッコリ微笑むマイコに胸がギュっと苦しくなる。俺だけのマイコじゃないこの現実に。


「俺も見ようかな…。マイコも一緒に見ない？」


手をマイコに差し出すと、ちょっとだけ戸惑う表情を見せたからそれがすげぇ嫌で、不安を消すようにその手を握ったんだ。そのままドアを開けて俺達の車に背をつけて二人で空を見上げる。マイコと繋がっているだけでこんなにも安心できるなんて。


「好きだよマイコ…。」
「まこっちゃ…」


マイコの言葉はキスで呑み込んだ――――…。
こんな綺麗な星空と、隣にはマイコ。このまま二人きりでいたい…。絶対に誰にも渡したくない。誰にも、壱馬にも…。どんなにずるくてもいい、マイコが傍にいてくれるなら。


「壱馬も俺達のこと、応援してくれるって…。」
「…え。」


瞳を揺らすマイコごと、俺の腕の中に閉じ込めた―――。

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