泣かせてごめん

【said 陸】

BBQは最終日の夜にみんなでやるってことにして、今日は俺達男飯ってことで豪快な料理を披露した。みんなうまいうまいって食い終わって一休み。俺はこっそりLINEでゆきみを呼び出した。北人と仲直りできたゆきみはご機嫌で。


「りっくんお待たせ!」


何の疑いもなしに俺の隣に腰を下ろす。ふわりと鼻をつく金木犀のような甘い香りに心拍数が上昇するのが分かった。好きな女に気持ちを伝えるのはいつぶりだっただろうか?今まで恋愛してこなかったわけじゃないけど、ゆきみに出逢ってその可愛さに歴代の彼女すらうろ覚えだ。


「はい、食べる?」
「いいよ、ゆきみ食いな。」


ペコちゃんキャンディーを手にしているゆきみはいつ見ても可愛くて、ほんとこの子と一生一緒に居られたらどんなにいいかって思わずにはいられない。


「わーりっくん星、すごいねぇ…。」


空を見上げるゆきみの髪にそっと触れると当たり前に視線が飛んできた。ははやっと目が合った。ねぇお願い、その可愛い唇にキスしてもいい?その甘い身体、閉じ込めてもいい?口に出したらきっとゆきみは俺を全身で拒否するかもしれない。だからごめん…今だけは誰の事も、北人のことも考えないで、頼むから。


「…――――好きだよ、ゆきみ。出逢った日からずっとゆきみだけを見てた。俺と付き合って欲しい…。」


ポトっとゆきみの手からキャンディーが落ちる。苺の味のする唇を舐めた俺を思いっきり、力の限り突き飛ばしたんだ。見る見る赤く頬を染めてそれからボロボロと涙を零す。やっぱり俺は泣かせることしかできないんだろうか。首を左右に振るゆきみは二歩も三歩も俺から離れる。それからこの期に及んでやっぱりゆきみは朝海の友達なんだって思えた。


「朝海は…?なんでこんなことするのっ!?」
「ごめん、でも。頼む、聞いて。俺は朝海のこと友達としてしか見れない。ちゃんと朝海にもそう伝えた。俺はゆきみを、」
「言ったの!?朝海に言ったのっ!?」
「言ったよ。朝海に気持ちを伝えられた時に。俺の中ではゆきみ以上の子はいない、」
「酷いよりっくん。朝海になんてことしたのよっ。わたしはっ、わたしは朝海が大事。朝海は大事な友達。朝海が好きなりっくんを好きになるなんてわたしにはできないっ!」


過呼吸になりそうなゆきみに手を伸ばすとその手を払って暗闇の中、消えて行く。追わなきゃって思うけど足が動かなくて。代わりに頬をツーっと涙が零れる。あれ俺泣いてる?失恋ぐらいで泣く馬鹿いる?今時…。

ガサっと音がして振り返ると、気まずそうなマイコと目が合った。


「陸…。」


マイコの声にまた涙が流れたんだ。



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