本気宣言？

【said マイコ】

ゆきみと樹が遅れて川原に来たから嬉しくて。だけど、陸が元気がないのが気になる。朝海となんかあったのかな？


「はぁー。」


膝を抱えて川に手だけ突っ込んだ。避けられてると思った壱馬は、今日は普通で。むしろ全然そんなことないって感じに私に接してくるからまた気持ちがフワフワしてしまう。まこっちゃんのことを考えると胸がキューってしてポカポカして嬉しい。私に向かってビールを差し出す壱馬からそれを受け取ってゴクリと飲むと、優しく微笑むんだ。


「マイコ、わたし飛べるかな？」
「へ？飛ぶ？なにが？」


急にゆきみに手を取られて視線を移す。どうやら飛び込めるスペースがあって、そこで他の観光客達が川に飛び込んでいた。でも結構高いし危険だよね。そもそもゆきみ、泳げないよね？


「止めとけ。」


言ったのは壱馬で。私とゆきみの会話を聞いていたのか、首を振っている。


「なんで？だめ？」
「絶対無理やん、ゆきみ。昨日溺れかけたん誰や？」
「ぶー壱馬の意地悪。」
「あほ、俺はゆきみの為に止めてんのやけど。マイコ、なんとか言ったって。」
「まぁ、無理だよね。ゆきみ高い所も苦手でしょ？」


今の自分から抜け出したいのか、ゆきみはなかなか諦めなくて。


「俺と一緒に飛ぶ？」


樹の言葉にパアーっと顔を明るくさせた。


「壱馬止めて！樹のこと止めて！」


慌てて壱馬の腕を取ってそっちの崖に行こうとする樹とゆきみを追いかける。でも次の瞬間、「俺らも飛ぶ？」…はいっ？何いってんの？


「一緒に飛ぼうや、マイコ。」
「はい？絶対無理だし嫌なんだけど。そもそも水着じゃないし、濡れたくないし、髪ボサボサになりそうだし、絶対足の裏切れそうだし、水飲んだら苦しいし、目汚れるし、」


ふはっ！って壱馬の腕が肩に回る。なんか誘導されるけど。樹のこと止めてって頼んだの聞いてないでしょ！？


「壱馬、私無理！」
「ええやん。俺一緒やで。絶対手離さんから安心しい。」


キュッて壱馬に指を絡ませられてドキッとする。やだ、おかしいよ。壱馬相手にこんなにドキドキするなんて、だめ。まこっちゃんとの未来を思い浮かべているはずだよね？私のことあんなに避けて朝海にベッタリだったのに、朝海がいないからって、朝海の代わりにでもしてるつもり？


「やだよ、壱馬。」
「だって俺マイコとの思い出欲しいねん。」
「そんなのもっと違うことすればいいじゃん！」
「普段できんことした方が、素直になれそうなんやけど。」
「え、よく分からないけど。」
「これ飛べたら俺、本気になろうと思う。」


真剣な壱馬の顔に、その低音に飛ぶ前だからもあるかもしれないけど、壱馬に聞こえちゃいそうなくらいドキドキしたんだ。

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