そういう話
【said 壱馬】
なにやってんねん俺。自分の気持ちと行動が裏腹っていうか別々っていうか…。心の中ではマイコを気にしとるってのに、慎の本気を聞いてからうまくマイコを見れんくなってん。このまま慎とうまくいくならそれでええって…―――頭では思っとっても、やっぱり気持ちがついていかへん。半ば諦めたようにマイコから距離を取る反面、同じように辛い想いを抱えとる朝海をほおってはおかれへん自分もおって。ほんまはマイコのあんな顔見たないし、させたくもない。でも…―――慎が可愛いし、大事やし、あいつが好きになったんがマイコちゃうんやったら素直に応援してあげられたんに、俺は大好きな慎に「頑張れ」も「応援してる」も言ってやれへん。最低やんな…
「ゆきみ達どうしたの?」
北人がケンタにそう聞くと「あーなんか女子会?的な?どーせなら俺らもそーいう話すっか…。」ニヤリと笑ったケンタがその口を開いた。
「初体験っていつ?もしくは、初キス…。」
「ふあ、なにその質問!」
陸がケンタにのっかって話を盛り上げようとしているんが分かる。北人は目をまん丸くしとって…。
「俺高1で付き合った彼女と初キス、初エッチ!」
陸の言葉に北人がまた目を大きく見開いた。このまま聞いとったら赤面しそうな北人がうける。見た感じ童貞なんやろうな北人。これで経験ありやったら結構ビビるわ。だからケンタの「北人は?」って言葉にぶんぶん首を横に振る北人を見て安心したなんて。
「俺は…―――これから…。」
これからゆきみと…って言いそうな北人に「俺も、これから…―――。」慎が同じように、これからマイコと…そう続きそうに言ったんや。
「壱馬は?」
「俺はまぁ…どっちもあるけど、キスは中2ん時で、初体験は中3の時。」
「早いね壱馬!」
陸が興味深々に色々聞いてくるから適当に答えてたんだ。でも…「樹は?」なんとなく声を潜めた瞬間、とんでもないことを言い放った。
「あるけど、」
ボソッと呟いた樹に、北人が怪訝な顔して「樹、彼女できたことないよね?」そう聞いた。一つ息を吐き出した後、樹が顔を上げる。
「ゆきみと、興味本位で。」
「…―――は?」
北人の声が妙に儚く聞こえた。
― 31 ―
prev / TOP / next