腹ごしらえ
「イツキ、渋谷のライリー行ってきてー。クロスの奴ら全員ぶっ潰していいけど、頭いたら倉庫連れて来て。」
それだけ言うとピって電話を切った。…よく分からないけど外は大事?だってすごい色んな叫び声とバイクのエンジン音。やっぱりここは住む世界が違う。上の一言で下の人間が動くなんてある意味大人と一緒。
「そんな不安そうな顔しなくても大丈夫だ。お前のことは守ってやるから。」
リクの声は安心できる。ちょっと高めのハスキーヴォイスなリクの声。できればずっと聞いていたい…なんて。
「あの、LINEなんて返せばいい?」
「ああ、貸せ。」
カズマが私のスマホを奪ってポチポチとメッセージを作成する。すぐに送信すると画面を消して私に返した。
「見てもいい?」
「だめだ。」
「…気になる。」
「言うこときけ。」
「…はい。」
私の知らない、分からない所で大事になっているような気がして気分が落ちる。時計の針は21時を過ぎようとしていた。お腹すいた。そういや夜ご飯食べてないや今日も。
「リクあの…コンビニとか行ってもいい?」
「なんで?」
「お腹空いちゃって。」
「…ぶっ、お前飯食ってなかったの?仕方ねぇな、行くぞ。」
肩に腕を回されてこの子部屋から連れ出された。倉庫の外にはそれでもまだ沢山人が連なっている。やっぱりリクを見て頭を下げて道をあけるこいつら。正確にはカズマやホクトにさえも。
「ケンタ、車出して?」
外でウ○コ座りして煙草を吸っている堀の深い金髪に向かってリクがそう言うと「了解。」近くにあった銀色のベンツに私を誘導したんだ。てゆうかベンツとか乗ったことないし、やばくない?こんな高級車パパでも買えないし。こいつら一体どういうことしちゃってるわけ?
「何食いたい?」
リクに聞かれて考える。何が食べたい?なんて今まで両親に聞かれたことはあっただろうか。
「…お寿司。」
私がボソっと呟いたら運転手のケンタがバックミラー越しに思いっきり舌打ちをした。え、なんで?今何食いたい?って聞かれたの私なんだけど。
「お前は餃子食ってていいから。」
「マジで!?サンキューリク!」
どうやら運転手ケンタは餃子が食べたかったらしい。