ランページの総長
「とにかくだいたいのことは分かった。それさ、ろくな友達じゃねぇな、ウリ押し付けるなんて。お前虐められてんの?」
カズマの言葉に俯く。きっと私の気持ちなんて言っても分からない。楽しそうに笑っているここの奴らになんて、理解できない。
「違うよ。やらなきゃ虐められる。それがみんな怖いんだ…。一人になりたくない。」
急に悲しくなった。結局私って人間を理解してくれる人なんてこの世には存在しないんだって思う。
「素直にそう言えよ。お前が今ここにいる意味がなくなんだろ。」
ポカッて背中を殴るカズマ。いやいってえよ、お前男だろ。一応私女!力いっぱい殴るとか酷い。でもやっぱりカズマの瞳はさっきよりも優しくてちょっとだけドキドキした。
「ありがとう…。」
「礼なら全部リクに言え。俺達は頭の言うことに従ってるだけだから。」
サラリとそう言ったカズマの言葉に素直に頷いたものの、ん?…違和感。頭の言うことに従ってるだけ?頭…?…恐る恐るリクを見ると煙草片手にビールを飲んでいて。
「はのう…、頭ってなに?」
掠れた声にリクは自分を指さす。
「俺のこと。ランページの総長、一応な。だから安心しろ。」
ポスって頭にリクの手が乗っかる。大きなその手は人間なんて信用できない私が信じた手で。前に友達が噂しているのを耳にしたことがある、ランページの頭のリクは喧嘩が物凄い強いって。でも滅多に手出さないからそれを知る人は少ないとか。今はもうほとんど喧嘩はしないって。何か理由もあったような気がするけど、思い出せないや。目の前のリクが本当にそのリクなのか半信半疑だけど、この倉庫はそう、いわゆる今時時代錯誤の暴走族が集まっている。だからきっと間違いないと思う。なんだか、背中に変な汗が流れた。
「どうして私のこと助けてくれるの?」
「どうってお前、死んだ目してる。」
それだけ言うと黙り込んだ。ちょっとだけ寂しそうな顔で視線を逸らしたリクは、また新しい煙草に火をつけた。人には触れられたくないこともあって、もしかしたらリクにとってはこれがそうなのかもしれない。
―――その時だった。ポロンとLINEにサキからのメッセージ。終わったら連絡しろってメッセージを見てウンザリした。途端にこの部屋三人の視線が私を捉える。ホクトまでもがこっちを見ている。
「あ、サキから。終わったらクラブ行こうって言われてて。連絡してって催促かも…。」
「クラブ?どこの?」
カズマが右眉をあげて私を見る。
「あんまり覚えてないけど、確か渋谷のライリーってとこだと思う。」
「なるほど、そういうことか。」
言ったのはホクトだった。私にはさっぱり分からないんだけどみんなホクトと同じ、分かったような顔をしている。その場で電話をかけるホクト。