やり残したこと
両親が離婚することになってどちらも選びたくないこと。ゆえに住む家もないしお金もない。でも自分のしたいこともないから生きてる意味が分からない。
「へぇ、けどお前やり残したことあるって言ったべ?」
リクに言われて苦笑い。
「それはいいの。それは私の問題だから。」
「そ?まぁ言いたくねぇなら無理に聞かねぇけど。」
このタイミングで恋してないなんて言えない。カズマとホクト怖ええし。いやホクト全然こっち見てないけど。
「で、このバイトはどうしたんだ?」
ほら、カズマの目がすんごい睨んでる。トイプーのくせに、可愛くない。私がくしゃくしゃにした紙切れをチラつかせてカズマが低い声で聞いてきた。
「それはクラスの子の身代わりで行くつもりで…。デートクラブがクラスで流行ってて、金稼ぐのに割がいいって…。」
「これデートクラブじゃねぇだろ?」
「うん。それはウリ。そっちのバイトだったって後出しで言われて…。」
そこまで言って俯いた。リクが明るい表情で私の肩を抱いた。
「お前、処女か?」
「なっ!そんなのリクに関係ない!」
無駄に慌てる私を見てリクがクスクス笑っていて、なんか悔しい。
「まぁ初めてを知らねぇオッサンに与えるぐらいなら死んだ方がマシだな。」
トイプーカズマが何故か納得したようにそう言う。見るとさっきまでの怖さは少し抜けていて。残念そうな微笑みで私から目を逸らした。だけどカズマの横、ホクトが今度はその口を開いた。
「これ、変な薬ねぇよな?噂で聞いた。ウリやってる女に薬売らせてるって。」
「へぇ、そりゃ大変だ。うちのチームの女にそれされたら全員纏めて地獄に落とさなきゃなぁ。」
ニコリともせず言うカズマに心臓が痛い。この人達の話す内容は明らかに住む世界が違う。次元が違う。私には分からない族の世界の会話をこの場でペラペラと話されてもさっぱり分からないんだけど。