映画みたいな展開


行きたくない、行きたくない、行きたくない。もうこのまま死んじゃおうかな…。気づくと学校の屋上に来ていて、柵の上に手をかけてそこに立っていた。一歩踏み出したら確実に地獄行き。でも私なんてパパにもママにも愛されてないし、死んだところで本気で泣いてくれる友達なんてきっといない。恋人だっていないし…。あー恋ぐらいしたかったなぁ。16歳でこの世を去ることになるなら、恋ぐらいしておけばよかった。


「何してんだ?死にてぇのか?」


ビクっと肩を震わせて声のする方向をチラリと見た。つーかいきなり話しかけんなよ!吃驚して飛び降りちゃったらどーしてくれんのよ、もう。咥え煙草で私と同じように柵の上に座って足を投げ出している。


「…まぁ。あんたも?」

「…どうだろ。別に生きてても死んでてもかわんねぇかもだけど…。」

「じゃあ一緒に死んで?」

「お前と?」

「うん。だめ、かな?」


上から下まで私を見た後、フって笑った。


「怖ええなら生きてろよ。」


…なんか諭されてる?別に怖くなんてない。でも…―――「分かった、生きる。やり残したことが一つあった。それまで死なない!」柵を登ろうとしたした瞬間だった。いきなり突風が吹いて足元がグラつく。ヤバイ、落ちる!!そう思ったらふわりと片手が私の腰に回った。今の今まで隣で煙草吸ってたそいつが私をしっかりと抱き留めている。ドキドキ心臓が大きく脈打っている。至近距離で男とこんな風に見つめあったことなんて初めてで。まともに目があって余計にドキドキする。


「名前は?」

「え?」

「お前の名前…。」

「こはる。」

「俺がお前をこの世界から助けてやるよ。俺を信じろ、こはる。」


こんな映画みたいな展開が舞い降りるなんて人生捨てたもんじゃないのかもしれない。


「うん、信じる。あんたは?なんて名前?」


私の問いかけに微かに微笑むとえくぼを見せて小さく囁いたんだ。


「リク。」


―――私はリクを信じる。



― 3 ―




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