警告


回転寿司から出ると待ちくたびれた顔で運転手ケンタとホクトが煙草を吸っていた。でもホクトはスマホ片手に誰かと電話をしていて、その表情は私の前とはあきらかにかけ離れているように思えた。…彼女とでも電話してるの?ってくらい優しい顔で、優しい声で…。あんな顔、いいな…なんて単純に思えた。あんな愛情、私は一度も誰からも貰ったことない。


「車乗れ。」


不意にリクが手を引いて車に乗せた。ケンタが戻ってくるとこっちに振り返る。


「イツキ全部吐き出させたって連絡きたけど?」

「倉庫連れてきてるって?」

「連れてこいって言っといた。」

「分かった。とりあえずこはるも一緒に来い。」


よく分からない話だったけど、何かが発覚したんだって。私に関わることなんだろうか?ホクトが言ってた意味がここで分かるんだろうか?それからの運転は行きとは尋常じゃないくらいスピードが違った。カーブする時に耐えられずリクの方に頭から突っ込むと「ばーか。」って笑う。でもギュって肩を抱いてくれるリクの手は大きくて温かくて、やっぱりなんていうかドキドキしたんだ。


「運転荒っ…。」


若干の車酔いすら起こしそうなぐらい目がぐるぐる回っている。倉庫に戻ると大きな囲いができているのが目に入った。真ん中にいる人はグッタリとしていて、そうとう殴られた跡が見えて思わず目を逸らした。リクが私の手首を掴んだままそこに近寄る。当たり前に道を開ける奴らの視線を存分に浴びて私はそこに連れていかれた。



「今日は警告だけだ。」


そう言ったリクは手をついているそこに足をダンっと乗せた。ううって唸り声が弱弱しく聞こえる。



「クロスのやってることは全部御見通しだ。俺達JSBの傘下についてるってこと、忘れんじゃねぇぞ!同じことやってみろ、全員ぶっ殺すからな。」


ダンって強く手を踏みつけるリクにちょっとだけ恐怖が生まれた。


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