タイプじゃない
「初めて来た…。」
「は?初めて?」
「うん。どうやって頼むの?勝手にお皿取っていいの?」
連れてこられたのは回転寿司って奴。ぶっちゃけ初めてで、一度入ってみたいと思っていたんだ。レールの上を流れる寿司を見て顔が笑う。
「あ、私お金ない…。」
「いらねぇよ。いいから食っとけ。」
リクに言われてペコっと頷いた。少ししてから私の前にトイプーカズマが座る。あっついのにGジャン羽織ってるカズマの顔は涼しげ。ホクトはいつまでたってもここには来ない気がする。
「お前家に帰る気ねぇのか?」
細いのにさっきからめちゃくちゃ食べまくってるカズマ。どこにそんなに入る胃袋があるわけ?腹八分目でやめておこうかどうしようか迷っていたら不意にカズマにそう聞かれた。私を見透かすようなカズマの視線にドキっとする。隣のリクも同じように私を見ていて。
「帰りたくない。あの家に私の居場所なんてないから。いてもいなくてもきっと変わらない。離婚するだけだと思う。」
「…ゆきみに頼むか…。」
「いいの?リク…。」
…ゆきみ?誰一体…。疑問が頭に浮かんだものの中トロがリクの手で私の前に置かれて頬が緩んだ。そんな私を見てブッて笑うカズマ。リクは隣に座っているせいか、顔がよく見えなくて。だから私の顔を覗き込んだ。
「もう見たくねぇってくらい食っとけ。またすぐ連れてきてやるけど。」
リクにそう言われて髪をクシャって撫でられる。前に座っているカズマも半笑いで。やっぱカズマかっこいい。クールそうな外見だけど、それがふわって崩れる瞬間がすごく可愛い…――――「なに見てんだよ。」…怖いっつーの!睨まなくたっていいのに。
「見てない。」
「惚れるなよ?俺間に合ってるから。」
「なっ!馬鹿じゃん、自意識過剰!別にカズマなんてタイプじゃないし。」
「そりゃよかった俺もお前みたいなガキはタイプじゃねぇよ。」
ムカツク!ちょっと可愛いとか思った自分がムカツク!フンって鼻息荒くカズマを睨んだらリクがポンポンって頭を撫でた。その大きな手で優しく。