天敵

事務所に戻ってHIROさんにインスタをやりたいと告げた。メンバーの素顔をあげていけば、女の子のファンも獲得できるんじゃないかって、健二郎さんが言ってくれて。「いいよ、アカウント作って貰おう。」そう言ってHIROさんはスタッフさんを呼んで私のインスタのアカウントを作ってくれた。モバイルでそれをアップしてくれて、早速始まる私の三代目活動。すぐに直己さんとELLYさんがLINEをくれてフォローしてくれた。とりあえず、引っ越し作業を手伝ってくれている健二郎さんのオフショットを上げると、一気にフォロワーが増えた。


「あ、いっちゃんも載せよう、イケメンだし、ランペファンもフォローしてくれるかも。健二郎さん、戻りますよ!」

「お嬢ちゃん、おっさんを振り回すね〜。」

「健二郎さんまだ若いです!」


そう言うと照れた顔で「馬鹿言ってんじゃないわよ!」急にオネエに変わった。そんなの無視してマンションに戻ると、綺麗に片付いた部屋。え、レイアウトは確かに健二郎さんがある程度やってくれていたけど…。服とかもちゃんとしまってある。これ誰が?


「あ、岩谷くん!いっちゃん、戻りました。お部屋すっごい整ってるけど…。」

「当たり前だろ、全部出して入れといてやったぞ!」


岩谷の言葉に白目向きそうになるわけで。だって…。クローゼットの下、収納ケースに収められた私の下着。ちゃんと畳んでそこに入っている。


「誰、これやったの、誰!?」

「俺。」

「岩谷〜やめてよ〜」


さすがに恥ずかしい。アスカのことバラしたの根に持ってるわけ!?だってお前がアスカにLINEしまくってるから仕方ないじゃんか!そう思いながらもこれ以上ことを荒げちゃいけないって。私が大人になればいいのよ、そう。…―――腹立つ!!!


「いっちゃん。岩さん撮影終わったらご飯行こうって、一緒に行こう?」

「あ、マジで?行きたい!」

「んふ。んじゃ一緒にね。」

「おいユーリ。俺も連れてけや。」

「絶対嫌。私の下着触ったこと謝ってくれたら考えてもいいけど。」

「…――悪かった。もうせえへん。」

「仕方ないなぁ〜。」


横でお腹を捩じらせる岩谷を見てふふんって私は健二郎さんの撮影を始めた。同時に、岩谷翔吾を天敵としようって心の中で思ったんだ。

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