壁ドン
やられた。やられた、やられた!!朝食を食べ終えて珈琲タイムの時に健二郎さんが私を見てクックックックッ笑っているから何事?って、スマホを覗き込んだらそこにいたのは岩さんのインスタで。まさかの私の寝顔!嘘でしょ、有り得ない!でもコメントの「可愛い」を見て思わず顔が緩んだ。
「順調に増えとってんなぁ、フォロワー数。ええやんか、この白目向いてる寝顔も!」
「白目…。岩さんじつは私のこと嫌いなの?悪意しか見えないんですけど。」
「めっちゃ可愛いやん、白目ちゃん。」
「健二郎さん、顔笑ってるんですけどぉ。」
ムゥーっとして健二郎さんの膝の上に乗っかって正面から両耳を引っ張った。「あ、お前。エロい格好すんな!」…この人頭ん中それしかないのかなぁ?悔しいからそのまま健二郎さんの首に腕を回して抱きついてみるとボトって音と転がるペットボトルと真っ赤な顔のいっちゃん。
「うわ、す、すいません!」
ガチャンと、リビングのドアを閉められた。慌てて健二郎さんから降りてドアを開けると眉毛を下げたいっちゃんが苦笑いで私を見下ろす。
「今のはふざけてやっただけだよ、いっちゃん。違うからね、健二郎さん!ぜんっぜんタイプじゃないから!」
「お前なぁ。仮にも先輩に向かって失礼を言うな!」
ポカッて健二郎さんの痛くない鉄拳が飛んでくる。そのまま肩を押されて壁に押さえつけられてドンって顔の横に健二郎さんの手がつく。もしかして、壁ドン?
「1回やりたかったんやぁこれ!臣ちゃんや岩ちゃんばっかやろ、こーいうん。どや、俺の壁ドン?どやどや?」
すんげぇ期待の顔で健二郎さんが私を見ているけど…
「どうって別に。アキラさんとかにやられたいです。」
「…そら勝てんがな、阿呆。」
「あでも待って、そのまま動かないで?」
カシャっとドアップ健二郎さんを激写して後でインスタを載せようってニンマリ。
「載せるん?俺の壁ドン。」
「はい!ファンは喜ぶと思うんで、ファンは。」
「たく。この小悪魔が。樹、本気にしたあかんで?岩谷シャワー終えたらはよ帰り、お前らは。」
「はい。」
早々にいっちゃんと岩谷を追い出した健二郎さんは、今日帰国するっていう臣さんを空港まで迎えに行こうって誘ってくれた。
…時に、健二郎さん暇すぎない?なんて思ったことは言わずにいよう。
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