温もり

時間割票を見てニンマリ。金曜日の3限が終わったあたしは颯爽と2組のドアを開けた。そのままそろそろと入って窓際の一番後ろの席で寝そべっているてっちゃんの腕をちょこっとつつく。「んあ…。」って声と共に薄目を開けてあたしを見るとてっちゃんがふわりと微笑んだ。


「なぁに?」

「ジャージ忘れちゃったの、貸して?次体育なの!」

「はいはい、」


2限が体育だったてっちゃんはそのままジャージスタイルで授業を受けていて、その場でジャージを脱ぐとあたしに差し出した。てっちゃんの香水に混ざっててっちゃんの匂いのするこのジャージ。思わず胸に抱きしめると「ばーか。」って小さく言うんだ。


「なんで?」

「そんな嬉しそうな顔すんな。」

「…嬉しいもん。てっちゃんの匂いするしー。」

「ばーか、変態。ちゃんと返せよ!」

「はーい。」


てっちゃんジャージを抱えて自分のクラスに戻って体育着に着替えた。ちょっと生温いてっちゃんの温もり付のジャージは女のあたしにはブカブカで、袖が長い。指がちょこっと出てるだけでひたすらそれを見ていた。ルンルンしながら校庭に出ると「あれ、土田くんの?」早速話しかけられた。


「うん、てっちゃんのー!いいでしょー!めっちゃいい匂い!」

「このこのー!ズルイんだからぁ!私も着たいわ!」

「ダメダメ、てっちゃんはあたしのダーリンだからねぇ!」


みんなに羨ましがられながらも、あたしは体育の授業を終えた。そのまま昼休み、5、6限は実習だからそのままジャージで過ごす。うわーい今日はてっちゃんの温もりに包まれてる1日。6限が終わってHRも終わると、廊下にブレザー姿のてっちゃんが立っている。


「お前いつまで着てんだっつーの!」


パコって軽く叩かれるけど全然痛くない。


「脱ぎたくないよー。土田って書いてあるからね、みんなあたしのこと見てー。気分良すぎた。」

「女って好きだよねそーいうの。まぁいいけど。今日はそのまま帰るの?それともこっちにする?」


スルリと自分の首に巻いてあったネクタイを外すと、それをあたしの首に緩く巻いた。ビバ、交換ネクタイ!これも最高!


「両方欲しい。」

「欲張るな。ほら帰んぞ!」


てっちゃんがあたしの腕を強引に引っ張って歩き出す。土田ジャージを着て、土田ネクタイをしめたあたしをみんなが見ている優越感にてっちゃんの腕にキュッと絡みついた。


【END】


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