「直人せんぱーい!」
部活帰り、ダンス部の直人先輩達が部室の前でだべっているのを発見してそっちに駆けて行った。高3の直人先輩が新歓の部活紹介で物凄いド派手なダンスをしているのを見て完全なる一目惚れをした。それ以降私はしつこいってくらい直人先輩を追いかけ回している。だってあんなかっこいい人他にいない。絶対の絶対に彼氏にしたい。
「おー。今帰り?」
「はいっ!先輩一緒に帰ろ?」
隣にしゃがみ込んで腕をギュッと絡めると、周りのみんながニヤリと私達を見た。困った素振りも見せない直人先輩は、わりと女の噂も耐えなくて。確かにモテるし、そこそこ遊んでるんだと思う。でもいい、構わない。最後に私のものになってくれれば。余裕の微笑みで私を見つめるその瞳は緩くて優しい。
「たく、仕方ねぇな。」
そう言うと直人先輩は私と同時に立ち上がって一方的に絡まっていた私の腕を取るとスッと指を絡めたんだ。わわ、テンションあがる。見つめる私を横目でチラリと見て「そんなに俺のこと好き?」なんて言うんだ。
「直人先輩、Sだよね?」
「ふはっ、なんだよ?」
「だってぇ、私にばっかり言わせるからぁ。」
「いーじゃん。聞かせてよ?」
「いいよ。好きだもん、だーいすき!いつ私を彼女にしてくれんの?」
「今。」
トンって直人先輩の腕が腰に回されて壁に背をつける。ドキドキする暇もないくらい素早く重なった唇。私、ファーストキスなんだけど!
唇をムチュってくっつけた後、直人先輩はペロリと唇を舐めた。ゾクッてして、なにこの感触。
「直人せんぱ、」
「目閉じて…。」
ずるい、そんな低い声で耳元で。でも最高に嬉しい。言われた通り目を閉じると、もう一度直人先輩の唇が重なる。ゆっくりと舌が入り込むとゾクゾクって身体の芯から熱くなって、モヤモヤ変な気持ちになる。ギュッと腕を掴むと直人先輩が「ヤベ。」小さく呟いた。
「もしかして、キス初めて?」
「はい。全部初めて、それでもいいよ?直人先輩にぜーんぶあげる。」
「可愛い奴だなぁ。でも初めてならもう止めとく。ごめんね?大丈夫だった?」
「え、やだ。もっとして。」
「だーめ。ちゃんとね、ちゃんと。このままだと俺オス丸出しだから、今日はダメ。土曜日ちゃんとデートしようよ?な?」
キュッて直人先輩が指を絡める。
「チャラ男に見えても優しいところも好きかも!」
「やかましいわ!チャラ男言うな!」
「だってーベロチューしたぁ。」
「そりゃするよ。俺男だもん。デートどこ行きたい?」
ニッコリ微笑む直人先輩の腕に身体ごと押し付けて私は耳元で囁いたんだ。
「ラブホ!」
一瞬目を大きく見開いた直人先輩は「バカモノ!」そう言ったけど「俺の部屋にしろや。」なーんて甘い誘い。やっとやっと私の元に来てくれたんだって、私達の間に季節外れの春一番が通り過ぎていった。
【END】