200円のSweet

【俊ちゃんミスドどれが食べたい?】


そうLINEを送ってかれこれ数十分。俊ちゃんからの返信はきていない。既読はされているものの、いわゆる既読スルーってやつ。今日はリハも終わって早く帰ってきてるはずなんだけどなぁ。疲れて寝ちゃったかな?携帯電話のサービスでミスド200円割引クーポンが出た。せっかくだから帰りに買って帰ろうって思ってるんだけど、もう乗り換えの駅についちゃうよ。小さく溜息をついて仕方なくミスドに入ったらブーっとLINEが届く。慌てて見ると【オールドファッション】そう一言入っていた。ふふふ、間に合ったー。自分の食べたいクロワッサンと俊ちゃんのオールドファッションを買って家に帰ると、ソファーでウトウトしている俊ちゃんがいた。


「ただいまー。」

「…あー寝みぃ。」


寝癖のついた髪がピヨンとしている寝惚け気味の俊ちゃんが倒れそうなくらい可愛い。思わず微笑むと私を見て眉毛をピクリと動かした。


「なんや?」

「んー。可愛いなーって。」

「あほか。ドーナツはよ食わせろ。」

「待って紅茶淹れる。俊ちゃんは珈琲でいい?」

「おー。」


もう一度ソファーに寝転がる俊ちゃんを背にキッチンでお茶の準備。熱々の珈琲と紅茶をもってリビングのテーブルに置くと俊ちゃんが起き上がった。ミスドの袋から出してオールドファッションを手渡すと無言で口に入れる。


「口パサパサなるな、これ。…お前、すげぇぞ、その口。」

「え?なに?」


驚いた顔をしつつ、何故か私からほんのり距離をとる俊ちゃん。さも嫌そうな顔で苦笑い。なんのこっちゃー!


「ようそれ選んだな、お前。」

「なに?俊ちゃんも食べたいの?一口あげようか?」

「いやいらん。粉とかチョコとかつきまくってんで、お前。子供か全く。」


キョトンとした私はニコッと笑うと俊ちゃんがぶはっと吹き出した。タオルを手にして私に近づいたものの、一瞬止まってそれを元の位置に戻す。なに?


「しゃあない、とってやる。」

「へ、俊ちゃん?」


私の手首を掴んで引き寄せると、そのまま後頭部を押さえつけられて俊ちゃんのキス。まさか、盛った?なんでこのタイミング?ええっ!?ドキドキしながらも、俊ちゃんの温もりに目を閉じる。ちゅって唇が触れ合うとなるリップ音に俊ちゃんの腕が私の髪を優しく撫でる。ニュルリと入り込む甘い舌が私の口から出て唇の周りをジュルリと舐めるとキュンって子宮が疼いた。俊ちゃんの息遣いに身体の力を抜いた瞬間、「ばーか。」俊ちゃんの声に目を開けた。


「俊ちゃん?」

「食いたくなったろ、唇…。」


俊ちゃんは自分のオールドファッションをパクつくと、そのまま私を見て小さく「食う?」なんて言うんだ。へ、食うって口移し?え、そゆこと?


200円のSweet
(く、食う。)
(はい。)
(え、普通にくれんの?)
(なんだと思ったんだよ?)
(…だって、今の流れだと。)
(ばーか。)


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