「俊ちゃん、俊ちゃん!」
「なんやー?煩い。」
「煩いじゃない!なんや、ちゃう!なんで私に先に言わないのよっ!?」
「…は?なんのこと?」
バンっとスマホを俊ちゃんに見せて一睨み。画面を見て私を見た後俊ちゃんは眉間に皺を寄せた。意味不明って顔で。私の態度にイラついたのか、テーブルに置いてある煙草を手にした。慌ててそれを奪ってもう一睨み。
「返せ。」
「返さない。」
「…なんだよ?イグアナみてぇな顔してんぞ?」
「んなっ、イグアナ…。冗談でしょ。もうばかばか、人間ドックの結果、なんで私俊ちゃんのインスタで知らなきゃならないの?」
勢いよく放った言葉に俊ちゃんがようやく目を大きく見開いた。どうやら私の怒りを理解した様子。ふぅーって小さく息を吐き出すとちょっとだけ弱気な顔。男の人って、血とか病気とかに弱い人が多いけど、俊ちゃんもわりとその手のタイプで。気持ちは強いものの、こーいうのはめっぽう弱かった。
「ワシ死ぬかもしれん。」
ほら、弱気発言。例えるならいつもは獲物を狙うハンターの虎。でも今は狙われたアルパカみたいにしょぼんとしている。普段がいかついからたまにはいいなんて思ってキュンなんてしている自分に慌てて首を振った。
煙草をテーブルに置くと俊ちゃんの手が伸びてくるそれをパシッと捕まえる。
「煙草は禁止してください。もうすぐツアーも始まるし。人間いつか死ぬから大丈夫。俊ちゃん一人にしないから。私がいれば寂しくないでしょ?」
「まぁ。」
「もっと喜んでほしいんだけど。」
「いやもうずっと一緒にいるからなんていうかお前空気だし。」
「…空気ないと死んじゃうでしょ?」
「おお、そうか。そうやな。」
何故か嬉しそうに歯を見せて笑う俊ちゃんに、また内心ドキッとしている自分がいる。俊ちゃんも歳とってだいぶ丸くなってきたのか、最近はよくよく笑う。喜怒哀楽をだしてくれるのは嬉しい。昔は何考えているのかさっぱり分からなかったから。
「私が俊ちゃんを一人にする訳ないでしょ?」
ほんの少し照れくさそうに俊ちゃんは私を見て告げた。
ありがとう
(な、なに、急に。見返り求めてる?)
(あほ、たまには言うよワシかて。)
(…え、感動。)
(泣き落とししても大好きなNAOTOには会わせんぞ。)
(…けちー。)
(………。)