やっぱりメロンソーダ

こんな夢を見た。







緑間、青峰、黒子、黄瀬、桃井、紫原とファミレスにいて、広めのボックス席に座っている。


「何頼みますか?」


「ん〜そーっスねー…も少しで夕飯の時間じゃないっスか。しばらく飲みもんで、その後夕飯にしません?」


「賛成!じゃあ私フレッシュイチゴジュースにしよ〜テツくんは???」


「僕は…グレープジュースで。青峰くんは何にします?」


「あー俺かー?んー、テツと同じんで良いわ(考えんのめんどくせー)。」


「緑茶。」


「んだよ緑間、おしるこじゃねーの?(ぜんざいあるぜー?)」


「それは軽食なのだよ…紫原と一緒にするな。」


「えっと〜俺はトロピカルアイスティーにするっス!紫原っちは?」


「んー…バナナキャラメルパンケーキとー、コーヒー。」


「あ、むっくん良いな〜一口くれる?」


「良いよー。」


「はい、じゃああとは赤司くん…。」








…という夢を見たんだ。


電話越し、技術が進歩したとはいっても、通常の電話からは声とせいぜいが息遣い程度しか伝わってこないというのに、赤司の表情が少し沈みがちなのが伝わってくる。
週に一度の恒例となった電話で、開口一番彼が言ったのがそれだ。
アナログの波から電子変換されたその先のリアルタイムの赤司。


(メールや留守電、じゃない、ほんもの赤ちん)。


その彼を陰らせているものが、夢であれ何であれ自分でないことを紫原は祈るのだけれど。


その会話の、どこの部分が引っかかったのか、つまり何故今日の話題に上っているのか紫原には分からない。
無言のまま先を促すと、赤司の口からため息が零れた。


「お前も、成長したなと思って。」


オレンジジュースが良いだとか(これは大抵どこにでもあるから良いのだけれど)、


白ぶどうジュースが飲みたかったとか(置いてあるところはあまり多くない、チェーンのファーストフード店)、


グレープスカッシュはここにしかないんだとか、シェイクが半額だからそれにするとか、


冬場は温かいココアかミルクティーか甘いホットミルクのローテーションで、


…結局、一番多かったのは、メロンソーダだったかな。


デザートを頼んでいてもいなくても、いつもいつも甘いお子様の飲み物ばかりだったお前がコーヒーなんて言い出すものだから。


敦、大人になったなと思って。


…と、電話の先遥か近畿地方の空の下、赤司はクスリと微笑んだ。


これは暗に、自分が子供っぽいと言われている。


(俺そんな子供じゃねーし…)


つい突っかかってしまいそうになった紫原だったが、ふと思いとどまった。


赤司が、無意味に自分をからかうはずがない。
だとしたらそれはもう真剣に、純粋な驚きからそう思ったのだろう。


「全く、いつまでも子供だと思っていたのに…ダメだな、これじゃ僕がいつまでも子供、みたいだ。」


「…」


電話の向こう、近畿地方の赤司の声は寂しげで。
今すぐに飛んで行きたい、心細く身を縮める赤司の傍に行きたい。
だがそれは願っても叶わないこと、代わりに精一杯の思いを込めて彼の名を呼ぶ。


「赤ちん、」


赤ちん、赤ちん、


今の自分にはこんなことくらいしかできない。
だから精一杯、彼の名を呼んだ。


「ん…敦、もう、…ふふっ、…分かった、良いよ、もう、」


ありがとう。大丈夫。


続いた言葉に嘘はないと思いたい。
もう一度赤ちん、と呼んで、


(会いたーい、)


それは口に出さず、こつんと額を受話器に当てた。


と、そこで思い出す。先ほどの、赤司の話。
一週間ぶりの彼の口から出た、彼の深層ゆめのおはなし。
そこには少し訂正箇所と補足事項がある。
それをまず直しておかなければ、彼の寂しさを完全に消し去ることは出来ない。


「赤ちん、さっきのさ、」


「ん?」


「飲み物。…俺さ…、」


飲めるよ、コーヒー。前から。


エスプレッソもいけるよ。アフォガード試したことある。


しょうがも、唐辛子も、キムチも食べれる。ていうか辛いもんは平気だし。
グリーンカレーも結構好き。
山葵も…まあ大丈夫。


「うん。でもね赤ちん、俺はそれを好んで選んでないだけだし、」


だからさ、それは今の俺の話でも、未来の俺の話でもないんだよ。


成長したとか、そういうのと違う。


赤ちん、赤ちん、寂しくなった?置いてかれたって、思っちゃった…?
そんなことないよ、大丈夫。俺はいつも、赤ちんの傍にいるよ。
その代わり、赤ちんが前に前にって進んで行ったら、…努力して、横に並ぶね。
ずっと一緒にいられるように。
ごめんストーカーみたいだし…でも、うん、まじ、そう…。
で、でね、でねっ赤ちん、


「敦…」


「それに、もういっこ、赤ちん、」

「…」








メロンソーダ(たまに豪華にクリームソーダ!)からコーヒーへ。


気まぐれな変化のその理由は、








「そのとき赤ちん、何飲もうとしてた?」








…、


「…あ、///」


「ちょっ…赤ちん今赤くなったでしょー!!??もー、傍に俺いないんだから、あんまし無防備な顔すんのやめてね。」


赤ちんのチームメイトのあれ、誰だっけ?
なんかすげー感じの、いるじゃん、見た目からガチの人の。
気ぃ付けてよ!!!もー無自覚にえろいんだから…!
京都の人全員にフィルターかけたい気分だし!お色気カットフィルター!


「敦…、」


「それにさ、…それ、赤ちんの夢だよね…?ってことは、赤ちんと俺おんなじ飲み物にしたいなーって思ってんの、俺じゃなくてあか」


「〜〜〜っっっ!!!わ、忘れっ///忘れろ忘れて何でもなかったよ、敦っ///そっちはどう!!??新学期始まったけど…!///」


「(わー///赤ちん照れてる…///可愛い///)ん〜特に何も〜。あ、こーはいできたよ、」


「(は、恥ずかしい…ものすごく恥ずかしい…///)そ、そう、だよね、本入何人くらい?こっちは…。」








メロンソーダ(たまに豪華にクリームソーダ!)からコーヒーへ。


気まぐれな変化のその理由は、







(少しでも君とおんなじがいいなって、背伸びしちゃう、)


(少しでも君とおんなじならいいのになって、願っちゃう、)


僕たちの想いが見せたそれはそれは素敵な夢なのです。








現実の僕たちは、好みも、通う学校も、プレースタイルも違うことばかりだけど、


(赤ちんのことを、)


(敦のことを、)


きみのことをあいしてるよってことだけは、おんなじ!!!


end.


13.04.27


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