観たかったと前に言っていた映画のDVDが出ていたから、喜ぶだろうと思って、彼女が家に来る日に合わせて借りてきた。僕はあまり興味がない恋愛系の映画。テレビの前に並んで座ってかれこれ30分、彼女は既にあらかじめ用意したタオルを湿らせていた。




「う、ひっく…」

「…ここ泣くところ?」

「っう、るさいな…ちょっと終わるまで静かにしてて…」

「えー、つまんないよ」

「終わるまでだから…」




興味がない僕にとっては暇なことこの上ない。終わるまでなんて、まだ最低でも1時間以上はあるのに、こんなの拷問に近いと思う。なのに彼女は僕より映画が優先らしい。おもしろくないなぁ。




「…ねぇ、暇なんだけど」

「だったら沖田くんもちゃんと観ればいいのに」

「んー…」

「…えっ?ちょっと…うそ、なんでー!?ない!それはないでしょ!」




彼女は映画のシーンごとに泣いたり驚いたり一喜一憂する。その百面相を見ているのは、おもしろい。




「ひっ、ヒドい…」

「あ〜また泣く」

「だ、だって…」




僕は彼女の隣から背後にまわって、啜り泣く小さな体を包むように抱きしめる。上手い具合にすっぽりと収まった彼女は、少し身震いしたけどすぐに背中を僕に預けた。髪から柔らかい香りがしてなんだか落ち着く。




「…沖田くん」

「なぁに?」

「映画に集中出来ません」

「しなくていいじゃない」




集中しなくていい。せっかく一緒にいるのに、僕を放っておくなんてそっちの方がよっぽどヒドいよね?

僕は彼女の肩にあごを乗せて、少しずつ赤くなっていく頬や耳を眺めた。




「でっでもこれずっと観たかったやつなんだもん」

「DVDだからまた後で観られるよ」

「でもでもっ、今すっごく良いとこだからさ…」




ちらりと画面を見れば、作り物のように整った顔をした俳優と女優が雨の中で人目も気にせず熱いキスをしている。何があって土砂降りの雨の中でそうなったのか全く分からないけど、寒そうだなと思った。




「ね、もうちょっと待って?終わったらいっぱい構ってあげるから」

「今じゃないとやだね」

「またそんなわがまま言って…」




抱きしめる腕を強めて鼻先を彼女の髪に埋めた。彼女が折れるまで、あともう一押し。




「君にじゃなきゃこんなわがまま絶対言わないけど?」

「……」

「どうせもう映画の内容なんか入ってないでしょ?」

「う……」

「ねぇ」





ちゅーしようよ、ちゅー


映画に負けないくらい、熱いやつをさ。





そう言えば彼女は呆れたようにため息をついて、リモコンの停止ボタンを押した。


101025
素敵企画べた惚れさまへ

一応SSL…同い年ということで…
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