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きみの未来のためならなんだってするよ。
それがたとえ大事なものを手放すことになっても、きみ以上に失いたくはないものはないから。
迅は、目の前に立ちはだかるボーダーのトップチームに不敵に笑った。
「うちの隊員にちょっかい出しに来たんだろ?」
そう言えば、目の前の太刀川はにこやかに言う。
「おー、じゃあ話は早いな。通してくれ」
「そうはいかないな」
そう言ってまっすぐ見据える。
「先輩として可愛い後輩を守ってやんなきゃいけないし、あいつらはキリのためにも必要なんだ」
キリ、の一言に面識のある風間と太刀川が反応する。
「あぁ、あの可愛い子。お前の幼馴染だっけか」
「え、なにそれ超見てぇ」
そう軽口を叩く当真を睨んで、風間は迅を見た。
「なぜそこでお前の幼馴染が出てくる」
「えー?それを教えたところで風間さんたちは引いてくれんの?」
「無論、引かないな。こちらも任務でここに来ている」
そして、これ以上は話しても無駄と判断したのか風間は構えた。
「やっぱり、引かないよな」
なら、こちらも一切容赦はしない。
彼女が記憶と自分を取り戻すためには、何よりも平穏が必要だった。ここでこのチームが玉狛に赴いて全面戦争となったら、キリは間違いなく壊れてしまう。
「分かっているのか迅。遠征に選抜されたという事は、ブラックトリガーに対抗できうると判断されたチームだぞ」
「あぁ、知ってるよ。だから、手を組んだ」
「迅!」
間髪入れずに嵐山隊の面々が、軽やかに迅の周りに着地する。嵐山は迅にからりと笑った。
「遅かったか?」
「いいや、ナイスタイミング。さすが嵐山隊」
いやいや、と嵐山は首を振る。
「大きな恩がある三雲くんと、あのキリちゃんのためと聞いたからな!」
にっと笑う彼に安心しつつ、その隣の木虎に少しちょっかいを出してみる。
「木虎もメガネくんのため?」
「いいえ全く。どちらのためかというと、全力でキリちゃんのためですね」
相変わらずプライドの高い木虎に苦笑いした。
「そう言ってくれるとキリも喜ぶな。こんどウチに遊びにくるか?」
和やかな雰囲気に、はいはい、と時枝が終止符を打つ。
「とりあえず今はこの場をなんとかしてからにします。ですよね?嵐山さん」
「あぁ、そうだな!」
そう言って、四人は太刀川達を見据えた。
「なるほどな。忍田本部長派と手を組んだのか・・いつになくやる気だな、迅」
「やる気もなにも、大切な人と大切な後輩の人生かかってますから、実力派エリートとしては本気を出さざるをえないんだな、これが」
そして自身のトリガーに手をかけた迅に、好戦的な眼差しをして太刀川は笑った。
「・・おもしろい。おまえの予知を覆したくなった」
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