03




 一通りキリの話をしたところで、こんどは他の話となり迅は一度キリを会議室の外へ連れ出すとこういった。

 「いいか、キリ。おれはもう少し話があるから、京介が迎えに来るまで待ってろよ」

 「うん、きょーすけまつ」

 こくこく頷くキリに不安を覚えつつ、迅は再び会議室に入っていった。





 人通りが少ないことにほっとしつつ、キリはきょろきょろあたりを見渡す。迅が再び会議室に行ってから数分もたっていないが、キリはすでに暇を持て余していた。そんな時。

 「・・? ゆういち?」

 廊下の先に、迅の後ろ姿を見てキリははっとする。言いつけも忘れてキリはその後ろ姿めがけて走ると、抱き着いた。





 「うわっ!」

 いきなり後ろから何かがぶつかってきて、嵐山は思わず声をあげてよろめく。隣の木虎と佐鳥はその声にこちらを振り向く。

 「ゆういち!」

 かわいらしい声が聞こえて振り向けば、見知らぬ少女がにこにこ抱き着いていた。

 「えっと・・?」

 状況がのめないのは嵐山だけではないらしく、木虎は珍しくぽかんとした表情を浮かべ佐鳥は何このかわいい子・・と少女を驚き半分、興味半分で見つめていた。
 少女は嵐山と目が合うなり、顔から笑顔が消え青ざめていく。

 「ぇ、だれ・・」

 「・・それはこちらのセリフなんだけれど」

 驚きで何も言えない嵐山の代わりに木虎がつっこむ。佐鳥はニコニコ少女に近付いた。

 「ねぇねぇ、キミ。嵐山さんの知り合い?」

 「っ・・!」

 少女はぱっと嵐山から離れて駆け出していく。しかし、その先には報告を終えた時枝がいた。

 「嵐山さん、報告おわーー・・? 知り合いですか?」

 「う・・!」

 少女はびくっと体を震わせて方向転換する、がそこには木虎がいる。

 「ちょっと、あなたさっきからなんなの?」

 逃げ場を失った少女はへなへなと座り込むと、人目を気にすることなく泣き出した。

 「ちょ・・! え、ええぇえ〜・・木虎のせいだ〜」

 「わ、私のせいですか!?」

 困ったように佐鳥はあわあわ駆け寄り、時枝は首を傾げつつ嵐山を見た。

 「えーっと、この子は?」

 「・・分からない」

 困ったな、と嵐山は頭をかいて泣いている少女に近付くとしゃがんだ。

 「君、名前は?」

 なるべく怖がらせないように、嵐山は少女の目線に合わせて聞く。身長こそ小さいものの、年はそんなに変わらなさそうだがなんとなくこの接し方が正しいと思ったのだ。

 「・・キリ」

 「そうか、キリちゃんか。俺は嵐山准」

 キリ、と名乗った少女はすんすんと鼻を鳴らしたのち、おずおずと会釈する。

 「で、こっちから佐鳥賢、木虎藍、時枝充だ」



  
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