03




 「ここ、ゆういち、ここ」

 「ここな? りょーかい」

 そう言われてキリに指示された長方形のブロックを引き抜く。積み上げられたジェンガはゆらゆらと数回怪しく揺れたが、何とか持ちこたえた。

 「ふん、だめねぇ。こういうのは勢いが肝心なんだから」

 そう言って小南は迅とキリを鼻で笑うと、器用にブロックを抜く。

 「こなみすごーい!」

 「まぁ、これくらいいかなきゃね」

 「ちょろいな、こなみ」

 「・・ちょろいな」

 ふふん、と胸をはる小南に陽太郎と木崎は次々にそう言ってブロックを抜いて積み上げていく。

 「そして俺はここっと」

 そう言って割り込んできた林藤がブロックを抜いたとたん、ジェンガは崩れた。

 「あーあ、これキリにせっつかれるから直すのおれなんですけど」

 「ゆういち、はやく」

 「はいはい」

 迅が直していると、林藤が言った。

 「・・迅、城戸さんがキリを連れてこいってさ」

 その一言に、小南が反発する。

 「ダメでしょ、キリはすっごい人見知りするんだから」

 「?」

 自分が話題だという事に薄々気づいているのか首を傾げるキリに、迅は言った。

 「・・いや、でも今行かなきゃ余計ややこしことになりそうだ」

 「うっ・・」

 その一言に小南は言葉を詰まらせる。

 「近界から自力で戻って来たのはキリが初めてだ。本部も情報が欲しいんだろう。かえってキリを出さないと余計怒らせる」

 「わかってる、けど・・大丈夫なのこいつ」

 木崎にもそう言われ、小南は無邪気に首を傾げるキリを見やる。

 「キリ、へーき」

 「今じゃないわよ」

 「?」

 一連の流れを眺めていた林藤は、キリと目線を合わせるようにしゃがむと言った。

 「キリ、ちょっとお出かけしようか。迅も一緒だぞ」

 迅、の一言にキリはぱっと顔を輝かせた。

 「いく!」

 「よーしよし」

 えへへ、と笑うキリを撫でる林藤に小南は不満そうな顔をするがそれ以上何も言わなかった。


  
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