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まぁ、もともとここはうるさいところだと思う。烏丸はリビングを開けるなり、いつも以上にてんやわんやなそこの雰囲気に思わず固まった。
「こらー! キリ! 陽太郎! それはあたしのおやつ!」
「・・」
「キリ! あいつからにげるぞ!」
「にげるー!」
「・・・・」
「キリ! 走りながら物を食うな」
「・・・・・・」
「キリちゃん! その笑顔もう一回!」
「お、宇佐美。その写真おれにもくれ。ぼんち揚げ一箱やるから」
「・・・・・・・・」
託児所になったのか、ここは。
小南から逃げ回っていた少女が勢い余って烏丸にぶつかり、目が合うなり泣き出した。
「だから危ないと言っただろ」
そう言ってまるで悪戯をしでかした幼子を回収するように、木崎が少女の脇を抱えて抱き上げる。
「・・なんすかその子」
確かに身長は150くらいといったところで小さいが、明らかに年は烏丸とあまり変わらないと思う。
しかし、木崎に運ばれて迅の膝の上でわんわん泣いて、明らかに年下の陽太郎に慰められている姿は幼子そのものだった。
「お、京介。悪いな、騒がしくて」
「ゆう、いち〜!」
「あー、もー、キリはもう泣くなって」
そう言いつつも迅の目は優しい。心なしか、周りのメンバーも同じ目をしていていわゆるこれは、
(・・でれっでれじゃないか)
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