01
あの時彼は、ずっとこんな気持ちだったのだろうか。
ぼんやりと重ねた手を見つめる。視線の先にある大きな手は暇さえあればキリに向かって伸びてくるのに、今は力なく白いシーツに沈んだまま動かない。
すこしごつごつしてて、自分よりも一回りも二回りも大きい手。キリは両手で包み込むと、その手に額を付ける。
「・・・・起きなさいよ」
ずっとため込んでいた一言が、思わず口から零れた。
「克己」
いつもなら、こちらから呼べば必ず浮かべられる笑みも、優しくこちらを見つめる瞳も、欲しかったらいつでもくれるのに。
克己、克己。
どれだけ呼んでも、ベッドの上に横たわる唐沢はピクリともしないのだ。
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