01
「遅い!」
医師の許可をもらい、三雲達を病院の駐車場まで連れ出せばすでにそこにいたキリが不満そうな顔をして車の前で仁王立ちしていた。
「しょうがないだろ。医者に黙って三雲くんを連れまわすにはいかない」
「・・・・そんなの、知ってるわよ」
「・・・・・・お前、どうした」
いつものご立腹な表情にちらちら垣間見える不安げな表情に思わず手を伸ばしかけて、やめた。ここは家ではない。外ではお互いに、一定の距離を保つ約束をしていたからだ。
「帰ったら聞かせろよ」
そっと囁けばキリはふいと顔をそらした。そのままツカツカ歩くとトリガーを握り締めて換装する。
長い髪は上に一つでまとめられ、堅苦しいスーツは一気にラフで動きやすそうな服装になる。そのせいもあってか、換装後の彼女はだいぶ幼く見えた。もしかしたら自分たちとあまり年は変わらないのかもしれない、などと三雲は思った。
「? ヒショさんどこ行くの?」
不思議そうな空閑にキリは振り返るとじっとこちらを見つめると数えるように三雲達を順に指さしていく。
「三雲くんと空閑くん。隣の女の子に、きれいなお姉さん。そこに私が加わるとどう考えても唐沢部長の車は定員オーバーです。だから、私は先に会場に行ってます。この体の方が早く動けますし」
「なるほど」
それを聞いた雨取が気まずそうにキリを見た。
「あ、あの、秘書さん。そうしたら私がーー」
「気にしないでください。その辺の考慮が足りなかったのはこちらのミスです」
そういって彼女はばっと駆け出した。
そんな彼女を見届けたのち、唐沢はにこやかに笑った。
「お待たせいたしました。行きましょうか」
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