02
「何それ、つまり全部三雲くんのせいにしてボーダー自体は悪くないですよってこと?」
車中告げられたことーーつまり、今回の大規模侵攻に置けるおおきな責任を一隊員に背負わせると言ったことが少し前の会議で決まったという事に、キリは思わずそう言った。
「ばかじゃないの、そもそも論点ずれてるじゃない。今日は被害の報告で大規模侵攻の原因を言う記者会見じゃないでしょ?」
「・・・・君ならそう言うと思った。だから、会議にも呼ばなかったんだよ」
そう言って少し笑う唐沢の横顔を睨む。
「誤魔化さないで。三雲くんはどうするの? 私、反対だからね。一番命張った彼が一番責められるなんて許せない」
「そうだな、俺の中でもそれは収支が合わない。だからこそ、行くんだよ。・・・・どうした、今日はやけにとげとげしいな」
「・・・・気のせいよ」
あんたのせいなんだから、と言いかけてキリは口を閉じると足を組み、目を閉じた。
「・・・・で? 学校で何かあったんです?」
病院につき、三雲を病院の外へ連れ出してもいいとの許可を取ったあと、ちょうど彼は病室から出ていたらしく彼を待つべく病室のソファに腰かける。
少し距離を取って唐沢はソファから離れた椅子に座るとそう切り出した。
「・・・・別に」
「・・キリ」
甘やかすような、そっと諭すような声音にキリはちょっと揺らぐ。最初に出会ったあの時のような冷たく他人行儀じゃない、声。
「・・・・進路、決めろって言われた」
「そうか、もうそんな時期か」
懐かしいな、と唐沢は呟いて続ける。
「・・キリの言葉は、真っ直ぐ届く」
なんの脈絡もなくそう言った唐沢をキリはちょっと見つめた。
「それはキリの一番の強みで一番の欠点だと思う。キリ、言葉はね、人間の一番の武器だよ」
「・・だから?」
「三雲くんも真っ直ぐな言葉を使う子でね、きっと彼からキリが学べることはあると思う。だから今日は連れてきたんだ」
「はあ?」
そして、唐沢はまっすぐキリを見た。いつもの、からかうような顔で。
「・・俺の傍にいるんだろ、それならまず進路云々よりそういう言葉の使い方を覚えておけ。交渉におけるもっとも重要な物事は言葉の使い方だからな」
「ば、ばっかじゃないの! なんで私があんたの傍にいたいって思ってるって前提で話すの!? じ、自意識過剰じゃないの!」
「おや、違いましたか? てっきり俺の傍にいたいがために悩んでくれていたのではないかと思ったんですが?」
「うるさいばか、黙れ!」
「ここは病院だぞ、静かにしろ」
「誰のせいだとーー」
そこまで言いかけて、あのー、と気まずそうな声が二人の会話に割って入る。ふと病室の入り口を見れば、唖然とする空閑と気まずそうな三雲がいた。
「!!!!????」
「やあ、おかえり。三雲くん」
「い、いい今の会話聞いて・・!」
「あの・・なんというか・・はい、聞こえてました。まるまる全部」
「ヒショさんの印象,大分変わったな」
心底楽しげに笑う唐沢に反して、キリはどんどん青くなっていく。せっかく自己紹介の時は猫を被ったのにこれでは意味がない。きっと、目の前で笑う唐沢は二人が近づいてきていたのを知っててわざと続けたのだろう。
「〜〜〜っ、ばか! 知らない!」
急に恥ずかしくなって立ち上がると病室を後にする。とりあえず、一刻も早くその場を離れたかった。
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