01
トリガーを握った手が震える。
いつもは軽く掌で回して、トリオン体に変身して出水と練習室に入る。
いつもやってることでしょ、と自分を叱咤してみるが今日、トリオン体に変身する意味が違う事なんてわかっていた。
トリオン量は無限じゃない。人の、命がかかってる。その重さが、このトリガーにのしかかって重いのだ。
「おいおい、なに震えてんだよ」
緊急呼び出しを受け、三人で学校から出ると校門から基地の方を見やる。おびただしい数の門が、開いていくのが見てわかる。
ふと、出水がそう言ってキリの背中を叩いた。
「わ、悪かったわね・・実戦は、初めてでその・・皆を助けられるかどうか・・」
言葉は尻すぼみに消えていく。
もしも、私のせいで誰かが傷ついたら。もしも、私の力が足りなくて誰かに悲しい思いをさせたら。嫌な思考はぐるぐる体中を這い回るようにして、キリを震え上がらせた。
「・・ばーか、トリガー持ったばかりのお前がいっちょまえに偉そうに」
ぴん、とおでこをはじかれてキリは出水を睨む。
「う、うう、うるさい! そんなの、分かってる!」
「いーや、わかってねーな」
出水の隣にいる米屋までそう言うのだから、キリは不満げに頬を膨らませる。
「お前一人がこの町救うんじゃねーんだから。キリができることをできる範囲やってこい。ピンチになったら助けてやるよ」
そう言って米屋がぽん、とキリの背中を押す。
「つーか、おまえはA級一位の隊所属の射手さまさまに教わったんだぞ。トリオン兵なんて蹴散らしてこい。いつもの威勢はどこいったんだっつーの」
出水はそう言って、キリをくしゃくしゃっと撫でるとにっと笑う。
『大丈夫。確かにその時、きみはその厄介に一人で対面しなくちゃいけないけれど、戦う時はひとりじゃないよ』
不意に、朝に言われた迅の言葉が頭をよぎって出水と米屋に触れられた箇所から僅かに、熱が広がっていく。キリは、トリガーを握り締めた。
「・・ありがとう」
「おう、行ってこい。おれらもすぐ行く」
とん、と出水に肩を押されたキリは二人に笑いかけると呟いた。
「・・・・トリガー起動」
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