01
トースターが軽い音を立てて、中のトーストが焼けたことを知らせる。
キリはマグカップにお湯を注ぎ終わるとこんがり焼けたトーストを皿にのせてテーブルに座った。
ぼんやりとテレビを眺めてトーストをかじる。近界民の大規模侵攻が近々ある、という事実なんてウソかと思うくらいに平穏な一日が始まっていた。
「・・早いな」
そう言ってあくび交じりにリビングに入ってきた唐沢は、いつものぴしっとした姿はどこへやら髪はそのままでパジャマ姿である。
「克己が遅いの。なんかだんだん朝弱くなってきてない?」
「秘書が起こしてくれるから寝坊の心配もなくなったしな」
ふっと笑って目の前に座る唐沢に、コーヒーを渡す。
「大人が甘えんな、ばか」
「はいはい、すまないな」
全く反省の見えない唐沢に溜息をつき、立ち上がる。まだ弁当の支度がまだだった。
「そうだ、この前キリのお父さんにあったよ」
「はぁ? また帰って来いって?」
「・・いいや、キリを頼むと言われた」
キリは少し動きを止めたのち、あっそ、とだけ言って作業を開始する。あまり親子関係のことを他人があれこれいう事でもないので、ここは見守ることにしておく。
「今日は午後から営業だよね、朝は本部に顔だすの?」
「・・そうだな。朝顔を出してそのまま営業にいって直帰する」
「はいはい」
そこまで会話を続けると、唐沢がふと笑った。
「・・何」
「・・いいや」
幸せというのはこういうことだろうか、だなんて柄にもなく考えてしまったのは彼女には秘密にしておこう。
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