色は思案の外
※もしも夢主が唐沢さんではなく、忍田さんに引き取られていたらという管理人得番外編です。ご注意くださいませ。
どうしたものか、と忍田は目の前の少女見やった。
「・・何」
ぶっすうと頬を膨らませてこちらをじと、と睨むキリに忍田ははっとする。
「い、いや。・・すまないな、あの会議室は君には少し居心地が悪かっただろう」
忍田自身、あそこの空気はたまに嫌に思う時がある。皆、腹の中に自分の思惑を抱えていて何時の間にか出来上がった派閥で睨み合い、相手の隙を狙う。
人の上に立つ立場となった時、覚悟は決めたもののそんな会議室の空気に押しつぶされそうになる。そう唐沢に言えばあなたは若いな、と同い年にそう笑って言われるものだから余計に意味がわからない。
「・・あんたも」
「?」
「・・あそこ、嫌い?」
嫌いか、と言われればそうじゃない。あそこにいるメンバーは揃いに揃って確かに個々の分野においては実力があるし、話も通じる。だからこそ個々に固い志があって、余計に衝突するのだ。
「いいや、私がまだまだなんだと思う」
そう言ってにこやかに笑い返せば、少女はぱっと顔をそらしてそう、とだけ言う。十七と三十三では二倍弱年が離れていることもあって、お互いにどうしていいのか分からない。
(とりあえず、自己紹介でもすればいいのだろうか)
「君は、西条キリくん・・だったね?」
「そう、だけれど」
「私は忍田。忍田真史。お互いに色々あるが、君にはできるだけ安全を保障したい。よろしくたのむ」
すっと手を差し出せば、キリは少し躊躇したのちにその手を遠慮がちに握り返す。
「・・変なひと」
「そ、そうだろうか?」
「・・うん」
そう言って少し上げた顔は笑っていた。
「・・こんなバカ正直な大人、初めてみた」
その笑顔に、忍田はつられて笑った。
「そうか。よく、言われる」
「・・でしょうね、嫌いじゃないわ」
年甲斐もなくその一言に嬉しい、と感じてしまうのだから、忍田は誤魔化すようにはにかんだ。
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