「こら、ハボック少尉!また煙草吸ってるなー!?」
「すっ、すんま…せ、って、なんだよ脅かすなよ…」
人気のいない廊下、壁にもたれかかって、窓を開けて煙草を吸っているハボックに、ちょーっと後ろから脅かしてみた。ふふ、こんなので驚いてやんの!
「煙草、いい加減にしないと死ぬよ」
「大丈夫、もう手遅れ」
「何が大丈夫なんだか…」
ぷかぷか。ふはーと煙草をふかすハボックの肺は、たしかにもう真っ黒かもしれないけれど。…煙草をふかすハボックは、とってもかっこいいのだけれど。
「……口、寂しいの?」
「は?」
「物足りないの?」
煙草を吸うのは、ただ吸いたいから吸うのか、何か物足りないからなのか。まぁ私は吸わないからわかんないけど。ハボックはどっちなんだろうね。
「んー…なんだろな。わかんね」
「ふーん……あ、飴あるよ。食べる?」
「今はいらない」
ぺり。飴の袋を外す。ぱく。飴のいちごミルクの味が口いっぱいに広がった。煙草のにおいが鼻につく。煙草特有の苦いにおいと、飴の甘いにおいが混ざる。
「……うーん…」
「どったの」
「たしかに、やっぱ…口寂しい、かも」
煙草のにおいがさっきよりも強くなる。ハボックの顔が近いとかそんなの考えてる暇もなく、
「飴、甘いな」
煙草の苦い味が口のなかに広がる。いちごミルクの甘い甘い飴は彼に取られて消えた。
ああ、もう、ばか。煙草のにおいが、ハボックのにおいが忘れられなくなってしまった。
20100123