おうじ、皇子、 | ナノ


「好きだ」

「……………」

「……好きだって」

「……………」

「…聞いてるか?」

「……ば、」

「ば?」

「ば、ばかじゃないの」

「え、第一声がそれ?」


リンがまた私の家に来て、それで私の袖をひっぱってここに座れとか言うから座ったのに、そんな、そんなこと、


「…ばかじゃないの」

「2回も言うな」


ああ、ああ、もう私、こんなに可愛くないこと、もう少しまともなことが言えないの、この私の口め。


「…皇子、皇子はだめです」

「………」

「私なんか、庶民になんかにそんなこと、言ってはだめです」


もっと皇子はいい人を選ばなきゃとだめです。
そう言うと、リンは、哀しそうな顔をした。ごめん、ごめんねリン、そんな顔させて。


「…いやだ」

「わがまま」

「わがままでいいよ」

「…横暴」

「一途と言ってくれ」


リンが私の手をとる。あったかいなぁ、水仕事ばっかりやってる私の手は荒れてるからボロボロだ。


「俺はお前がいい」


どうしてそういうこと言うの。私の胸が締めつけられて、ぎゅっとなった。苦しいよ。リンが、私を抱き締めた。苦しい、リン、好き、好きすぎて苦しいよ。




20100118
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