君がいるから寒くないよ | ナノ



いったいこの寒さはなんなんだろうか。冷たい風がびゅうびゅうと吹いて、俺は思わずぶるると震えた。


「さっむ!」

「やばいねー異常だ」


栄口も寒いようで、肩を擦っていた。今年は夏が暑過ぎたから、冬はすげー寒いっつってたけどまさかここまでとは。まったく予想していなかった寒さに、俺はまたも身を寄せた。
たとえこんなに寒くても、俺達はまだ野球があるのだ。今日も今日とて部活を頑張る。まあ動いたあとはそんなに寒くない。
部活が終わり、更衣室で着替えているときにちょうどメールがきた。携帯を開いてみると、彼女の名前。あれ、今日一緒に帰るとか言ってたっけ?


部活お疲れ様(^o^)
見てたよ
かっこよかった!


俺は急いで着替えて、部室を出た。途中で田島がなんかどっか寄ろうとかなんとか言ってたけど、俺は無理!の一言だけ残して走った。水谷が笑ってた気がするからあとでしめる。


今どこ?

門のとこ

分かった、待ってろ


そんな短いメールのやり取りをして、俺は走った。ほら、走れば全然寒くない。門に行くと彼女がいた。


「あっ泉!」

「お前、まさかずっと見てたの?」

「うん」

「…風邪引くじゃん」

「そこ?」


彼女はけらけらと笑って、ごめんごめんと謝った。反省の色が見られないけど、まあいい。
しかしよくよく見れば鼻は赤いしさっきから鼻すすってばっかだし、はあ、こいつばかだ。せめて建物の中に入れよ。窓からでも見えんじゃん。


「今日一緒に帰るとか言ってたっけ?」

「言ってないよ」

「じゃあなんでいんの」

「別に。ただ泉見てた」


なんて可愛いことを言うんだ、とか思ったのはひみつ。なぜか言った本人より照れてしまった俺は、見られないように息を深く吸い込んで、深呼吸。冷たい空気が肺にいきわたる。
彼女の頬にそっと手を添えると、冷たかった。


「…冷たいじゃん」

「大丈夫寒くない」

「嘘つけ」


彼女は強がりだ。しょーがねー、手かせよ。そう言って、手を握った。そしたら彼女が顔を赤くして、ばーか、惚れ直した?
でもこんな寒いなか外で待ってるなんてばかだ。だから反対の手ででこぴんしてやった。痛い、とか言って、たいしてそんな痛くないくせに、ちょっとむくれた顔してこっちを見るから、今度は頬をむにっとつまんで、笑った。
そしたら彼女がつられて笑うから、握った手を少し強くぎゅっと握るから、そのすべてが、いとしい。なんて、高校生にはまだはやいかな。



101129 泉誕生日記念
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